検証対象

(※女性と軍人風の男性が口論する映像)
一般ユーザーのYouTube投稿動画(2024年12月24日、約1059万回再生)
判定

これは演じられた架空の場面である。
ファクトチェック
妊婦に席譲らない女性の鞄を投げる?
2024年12月にYouTubeに投稿された「軍人が他人のカバンを投げた理由」と題するこの動画は、1000万回以上再生されている。
動画は約46秒で、海外のバスの車内の光景に日本語のナレーションと字幕が付けられている。動画の内容は、横で妊婦が立っているにもかかわらず鞄で座席をふさぐ黒人女性に対し、迷彩服を着た軍人風の男性が鞄を床に叩きつけ口論になるというもの。最終的には鞄の持ち主の女性が涙を流して謝るシーンで動画は終わる。
同じ動画はTikTokにも転載されており、約47万回再生された投稿もある。

Xでは2025年9月、同じ光景を映した約3分33秒の動画が約4000リポストを獲得し拡散。YouTubeやTikTokの動画には無い場面もより詳しく映っているが、動画は上記とは別のTikTokアカウントなどを経由し転載されたものであり、大元の出典は分からなくなっている。

同じ動画は著述家の谷本真由美(めいろま)氏といった著名人にも投稿されている。
すぐ近くに空席?
しかし、一連の動画をよく見ると、女性が座っていた席のすぐ近くにも空席がある。男性が女性の鞄を床に叩きつけてまで席を空ける必要は無かったように見える。

また、撮影者が騒動の一部始終をまるで予期していたかのようにすぐ近くで映像に収めているのも不自然だ。
演技の動画を多数投稿
実は、この動画は演じられたものであり、実際の光景ではない。
動画のオリジナルは、海外のYouTubeチャンネルに投稿されたものと思われる。Xに投稿されたような長いバージョンは既に削除されたのか確認できないが、4本に分割されたショート動画バージョン(2024年6月投稿)は現在も見ることができる(①、②、③、④)。

このチャンネルでは、バスを始め、飛行機、病院、スーパーなど、様々な場所で起きる騒動を題材に数多くの動画が投稿されている。ところが、これらの動画には同一と思われる人物が繰り返し登場している。例えば、上述の女性と口論になった軍人風の男性の首には「Believe」という文字のタトゥーがあるが(下図左)、同じようなタトゥーがあり容姿もよく似た男性が別の複数の動画でも確認できる(中央:飛行機のトイレでガールフレンドの浮気を目撃する男性、右:バスの車内でインフルエンサーのやらせ撮影に遭遇する男性)。

チャンネルの説明欄には、運営者はマジシャン兼コンテンツクリエイターで、実生活の出来事を再現していると記載されている。つまり、動画は実際の出来事をそのまま撮影したのではなく、あくまで演じられたものだということだ。
こういった騒動がチャンネル運営者が主張するように元々は本当に起きたものなのかどうか、確認することはできない。しかし、少なくとも現実の光景をそのまま映したものではないし、特に日本のYouTubeなどで拡散された動画投稿には演技であることの説明が全く無い。したがって、これらは「ミスリード」であると判定する。
今回の動画については、アメリカのファクトチェックメディアLead Storiesも検証している。
演技動画の誤解は過去にも
このように、海外で制作された演技動画が実際の出来事と誤解され拡散される例は多い。リトマスでも、「トランス女性」が女子トイレに入ろうとして止められる動画や、子供が連れ去られそうになったところを助けられる動画といった、海外の演技動画を検証してきた。海外にはこうした架空の光景を演じる動画チャンネルが多数存在するが、それらの動画が演技であることを明示せずに拡散されるケースが後を絶たない。
(大谷友也)






