検証対象

中国のHIV感染者が東京都の「身体障害者」として認定された。 日本人の障害者は対象外、がん患者も対象外、重病の高齢者も対象外。 しかし、中国の性感染症患者はあらゆる福祉を受けることができる。
一般ユーザーのX投稿(2025年7月7日、約1.2万リポスト)
(※画像付き投稿)
判定

身体障害者手帳の交付に国籍の要件は無く、外国人であっても取得可能なのは事実。ただし、交付基準は日本人・外国人共に同じであり、日本人のHIV感染者が身体障害者手帳の対象外ということはない。
ファクトチェック
検証対象の投稿では、中国語のSNS「小紅書」のスクリーンショット画像らしきものが翻訳付きで添付されており、そこには東京都の身体障害者手帳の写真と共に、「記念すべき『身体障害者』になった日」「10月1日『身体障害者手帳』を取得」「HIV」といった記述がある。後天性免疫不全症候群(AIDS・エイズ)の原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)への感染を理由に、中国人が都の身体障害者手帳を取得したと読み取れる内容だ。
検証対象の投稿者は、これについて「日本人の障害者は対象外」などと主張。この文言が「日本人のHIV感染者は身体障害者手帳の対象外である」という意味なのかは不明瞭だが、投稿への反応を見る限り、そのように受け取っているユーザーは多いようだ。
なお、画像内には「無料で東京都現代美術館と清澄庭園に行ってきた」との記述もあるが、10月1日の都民の日にはこれらの施設は誰でも無料で入園・観覧できるため、これは身体障害者手帳の取得とは関係が無い(東京都現代美術館は常設展のみ無料)。
当該のX投稿は、InstagramやThreadsなどにも引用され広まっている。

国籍にかかわらずHIVは対象
身体障害者手帳とは、身体の機能に一定以上の障害があると認められた人に対して交付されるものである。療育手帳、精神障害者保健福祉手帳と合わせ「障害者手帳」と総称され、取得によって自治体や事業者による様々なサービスを受けることができる(例:JR東日本の運賃割引)。
身体障害者手帳交付の根拠となる身体障害者福祉法には、国籍に関する要件は存在しない。日本に滞在する外国人も身体障害者手帳を取得することは可能であり、この点は厚生労働省(p.5)の通知にも明記されている。ただし、有効な在留資格を持つこと、一時的滞在でないことなどが条件となる。

また、HIV感染によるによる免疫機能障害(エイズ)も、身体障害者手帳交付の対象となっている。これは国籍にかかわらず同じ基準が適用されるものであり、障害の程度に応じて等級が決まる(参照:厚労省1、2、東京都)。

したがって、検証対象の投稿画像のように、中国人のHIV感染者が身体障害者手帳を取得することが可能なのは事実だ(ただし、この人物が本当に手帳を取得したかは確認できない)。一方で、HIV感染による障害を理由に身体障害者手帳を取得することは日本人もでき、対象外ということはない。「日本人の障害者は対象外」とする投稿は、投稿者の実際の意図は定かでないものの、事実と異なる印象を与えるため「ミスリード」と判定する。
がん患者が手帳取得できる場合も
検証対象の投稿では「がん患者も対象外」「重病の高齢者も対象外」といった言及もされているが、これも手帳の交付基準は日本人か外国人かにかかわらず同じで、誤解を招く内容である。
そもそも、身体障害者手帳は障害の状態に応じて交付されるものであり、がんやその他の病気そのものが基準になるわけではない。
東京都の福祉局のページには、以下のように説明されている。
問:私は○○病ですが、身体障害者手帳の対象になりますか。
東京都心身障害者福祉センター「身体障害者手帳について」より
答:疾病の結果としての障害の程度や生活動作の支障などにより認定しますので、病名だけでは判断できません。ただし、障害の種類によっては、原因疾病が限定されているものもあります。指定医に相談することをお勧めします。
つまり、がんなどの病名だけで一律に手帳交付が判断されるわけではないが、病気の結果としての障害の状態によっては手帳を取得できる可能性がある。国籍による条件の違いは無い。
がん研究会有明病院がん相談支援センターの資料では、がん患者が手術による声帯の喪失などによって身体障害者手帳を取得した事例が紹介されている。
また、がん患者を含む人への支援としては、障害年金制度も別途存在する。
都も「基準に違いは無い」と回答
リトマスでは東京都に対し、書面で本件に関する取材を行った。以下はその質問と、東京都心身障害者福祉センターからの回答である。
1)外国人のHIV感染者は東京都の身体障害者手帳を受け取ることが可能でしょうか。
→(回答)日本に合法的に滞在する外国人の方で、審査の結果、身体障害認定基準に該当すれば、身体障害者手帳の交付は可能です。2)日本人のHIV感染者は東京都の身体障害者手帳の対象外であるという情報は事実でしょうか。
→(回答)事実ではありません。3)外国人と日本人で身体障害者手帳の交付基準に違いはありますでしょうか。
→(回答)外国人と日本人とで身体障害認定基準に違いはありません。
(大谷友也)






