検証対象

岩屋外務大臣が中国人に行ってビザ緩和を表明した事が中国で既に話題で大喜び。 当たり前だ。 こんなの天国だろ? 都度ビザの申請が不要となり、10年ビザも新設され単独でも家族でも申請可能。 65歳以上の中国人はビザ不要で3ヶ月に国保に加入されたら医療崩壊ですよ。 外患誘致罪だろ
一般ユーザーのX投稿(2024年12月26日、約1.5万リポスト。原文ママ)
(※画像付き投稿)
判定

65歳以上の中国人観光客の入国ビザは、取得のための手続きが一部簡略化されるが、不要にはならない。
ファクトチェック
2024年12月25日、岩屋毅外務大臣らは、中国の王毅外交部長らと日中ハイレベル人的・文化交流対話を実施。日本に観光で訪れる中国人の入国ビザ(査証)について、一連の緩和措置を実施すると表明した。
検証対象の投稿は、この緩和措置によって「都度ビザの申請が不要となり、10年ビザも新設され単独でも家族でも申請可能」になるほか、「65歳以上の中国人はビザ不要」になるため、「3ヶ月(※原文ママ。「3ヶ月後」の間違いと思われる)に国保に加入されたら医療崩壊」だと主張している。添付された2枚の画像には、「対中ビザ緩和を解説しました!(对华签证放宽解读来啦!)」と題する出所不明の中国語の文章と、日本経済新聞記事から転載された表がある。
ビザ不要にはならない
投稿者の主張のうち「65歳以上の中国人はビザ不要」という部分は正しくなく、入国ビザが不要になるような変更は発表されていない。また、この緩和措置を利用して「国保に加入」することもできない。
緩和措置の具体的な内容については、外務省発表では具体的に「10年間有効の観光数次査証の新設」と「団体観光査証の滞在可能日数の延長」の2点が挙げられている。しかし、NHKや日本経済新聞などの報道で、措置の内容はさらに詳しく明かされている。
投稿者の指摘のうち、「都度ビザの申請が不要となり、10年ビザも新設され単独でも家族でも申請可能」という部分は概ね正しい。上述の報道によれば、この措置により、富裕層やその家族を対象とする10年有効の個人観光マルチビザ(有効期間中複数回使えるビザ)が新設される。ただし、マルチビザ自体は観光用でも条件付きで3年有効・5年有効のものが元々存在しているので、「都度ビザの申請が不要」になるのは初めてではない。また、マルチビザではない一次ビザについては、たとえ過去に取得したことがあっても渡航のたびに新たに申請・取得が必要だ(参照)。
一方、65歳以上の人のビザに関する緩和措置については、「65歳以上の人がビザを申請する際、これまで求めていた在職証明書の提出を不要にする(NHK)」「65歳以上の中国人に限り、個人向けのビザで在職証明書の提出を不要にする(日経)」とされている。あくまで入国ビザの発行のための必要書類が減るというだけで、「ビザ不要」にはなるわけではない。
岩屋氏も12月27日の会見で、これについて次のように説明している。
その上で、この度発表した緩和措置は、団体観光客に対する滞在可能日数の延長、15日から30日へということ、それから、高齢層に対する申請書類の簡素化などを含むものでございまして、今までは、在職証明、どこでお仕事をしていますか、という証明を求めていたりしていたのですが、65歳以上の高齢層になりますと、それは不要になるという考え方です。
外務省HPより(太字強調は筆者による)
本校執筆現在、一連の緩和措置はまだ実施されておらず、現行のビザ申請手続きの詳細は在中国日本国大使館のHPに記載されている。今回発表された緩和措置の対象となる短期観光ビザは、団体観光・個人観光ともに指定旅行社を通じて申し込みを行う方式だ。このうち、個人観光客向け一次ビザの申請では、特定大学の学生等を除き、「経済力が確認できる書類」の提出が必要とある(このページから「提出書類はこちら」のdocファイルリンク、またはこのページを参照)。

マルチビザの場合も、一部例外を除き「経済力が確認できる書類」は必要だ。
この「経済力が確認できる書類」は、具体的には「ゴールド以上のクレジットカード」「在職証明+年収確認書類」「資産確認書類」の3通りのいずれかで、今回の緩和措置により、65歳以上であれば「在職証明+年収確認書類」のうち在職証明書は不要になるというわけだ。
検証対象投稿に添付された中国語の文章は、「②高齢者の手続きが簡単になりました!65歳以上は観光ビザを申請する時に在職・退職証明を提出する必要がなくなりました(②老年人手续简化!65岁以上申请旅游签证时不再需要提交在职、退休证明)」と、この点を正しく説明している。
日本に入国する外国人は基本的に日本のビザを取得する必要があるが、一部の国・地域では一定期間までの滞在はこれが免除されている。しかし、香港・マカオ・台湾を除く中国本土は免除対象に含まれていないため、中国人が日本に入国する際は、短期滞在・長期滞在にかかわらずビザが必要だ。
なお、岩屋氏は2025年3月、この緩和措置に関する衆議院での答弁で「観光査証の免除」と発言したが、「緩和」の誤りだったとして後に訂正している(参照)。
国保加入は不可
検証対象の投稿者は、今回の緩和措置を利用して中国人が入国後3か月で国民健康保険(国保)に加入できるかのように述べているが、そのようなことは無い。
発表された一連の緩和措置はいずれも短期観光ビザに関するものであり、滞在が認められる期間は最長(「相当な高所得者」対象のマルチビザ)でも90日だ。外国人で国保に加入できるのは、基本的に日本での在留期間が3か月を超える場合であるため、短期観光ビザで入国する人は対象にならない(参照1、2)。
投稿は不正確
以上をまとめると、検証対象の投稿の3つの主張「都度ビザの申請が不要となり、10年ビザも新設され単独でも家族でも申請可能」「65歳以上の中国人はビザ不要」「3ヶ月に国保に加入されたら医療崩壊」のうち、1つ目は概ね正しいものの、2つ目と3つ目の主張は正しくない。事実に即した部分とそうでない部分が混じっていて、全体として正確性が欠如しているため、この投稿は「不正確」と判定する。
なお、65歳以上の中国人のビザ緩和措置に関する検証は日本ファクトチェックセンター(JFC)の記事でも行われている。
同様の主張が爆発的に拡散
今回の検証対象の投稿は約1.5万リポストを獲得しているが、同じ投稿者は同日に再び同様の投稿をしており、それも約8200リポストとなっている。

また、検証対象の投稿を引用したまとめサイト「JAPAN NEWS NAVI」の記事などの影響もあり、「65歳以上はビザ不要になる」や「(緩和されたビザを使って)3か月で国保に加入できる」という誤った主張をする投稿が爆発的に拡散。2024年12月から2025年1月にかけて数千リポスト以上を獲得している投稿が複数あり、最大で2.8万リポストのものもあった。

なお、このうち1つ(上図上段中央)のアカウントは一見一般ユーザーのようだが、「JAPAN NEWS NAVI」の関連アカウントとして登録されている。

2025年5月にも再び拡散の波が発生。この時も最大で2.2万リポストを獲得する投稿があった。

まとめサイト「Tweeter Breaking News-ツイッ速!」の記事の公式アカウントからの投稿や、それを引用したタレントのほんこんさんの投稿も拡散されている。

このように、事実と異なる部分を含む投稿は、まれに見るほどの規模で広まっている。多くの人が信じ拡散している情報だからといって正しいとは限らず、注意する必要がある。
(大谷友也)