検証対象
「世界学校給食の比較 Japan酷すぎん!? ブラジルにすら負けてる。😭
一般ユーザーのX投稿(2024年4月8日、約3800リポスト)
(※画像付き投稿)
判定
画像のうち日本の写真のみ実際の給食であり、他の国のものはアメリカの外食チェーンが制作したイメージ写真である。
ファクトチェック
この投稿には、「世界学校給食の比較」として、トレイに載せられた4種類の給食の食事の画像が掲載されている。それぞれの食事の下には「Japan(日本)」「BRAZIL(ブラジル)」「SOUTH KOREA(韓国)」「Italy(イタリア)」とキャプションが付けられている。
ブラジル、韓国、イタリアと比べると、日本の画像の食事は品数・量ともに少ないように見える。
日本以外の「給食」はアメリカ企業によるPR画像
日本以外のブラジル、韓国、イタリアの3つの画像の食事はいずれも同じトレイに盛り付けられており、背景も木目調で共通しているように見える。
これら3つの画像は、アメリカの外食チェーン「Sweetgreen」によって2014年11月にソーシャルブログサービス「Tumblr」に投稿されている(投稿の意図や背景についてはハフポスト日本版の記事が詳しい)。この投稿は、イタリア、フィンランド、フランスなどの8カ国およびアメリカの学校で生徒に提供される給食から、将来世代の食事について考えることをテーマにしていて、以下のように注が付けられている。
Note: These images are not intended to be exact representations of school lunches, but instead, are meant to portray different types of foods found in cafeterias around the world.
SweetgreenによるTumblr投稿(2014年11月24日初稿。この注部分は2015年2月28日更新時に付け加えられたもの)。斜体は原文ママ
(※筆者訳:注:これらの画像は学校の昼食の正確な表現であることを意図したものではなく、世界中の食堂で見られるさまざまな種類の食べ物を描くことを目的としている。)
SweetgreenによるTumblrでの投稿は、実際に生徒が自分の食事を撮ってオンラインで共有した写真や、学校での給食についての調査を参考にしたと書かれている。学校給食調査についてのリンク先は現在はリンク切れしているものの、アーカイブサイトを基に確認すると、AP通信による世界の給食の比較記事であることが分かる。しかし、Sweetgreenの投稿はAP通信の記事とは掲載されている国も給食の内容も大きくかけ離れているため、生徒が撮った写真(具体的にはどのようなものか不明)の方を主に参考にし、メニューを再現したイメージ画像であると推測される。
上段:Sweetgreenによるフランス(左)とアメリカ(右)の給食イメージ画像(Tumblr投稿より抜粋)、
下段:AP通信によるフランス(左)とアメリカ(右)の給食(アーカイブより抜粋)
なお、これら各国の「給食」が、既に決まった献立が提供される方式のものなのか、生徒が自分で献立を選択する「学食」方式であるのかは、調査した限りでは確認できなかった。
Sweetgreenによる「給食」の画像は正確な再現を意図するものではないため、実際にこれらの国でどのような給食が提供されているのかはこの画像だけでは不明である。
日本の給食は立川市の広報掲載
一方、「Japan」とキャプションが付けられた給食の写真は、東京都立川市の広報誌『広報たちかわ』の2024年4月10日号1面に掲載されたものである。この号の1面には、「学校給食費を無償化します」という見出しや、立川市の共同調理場の写真、子供たちが給食を配膳する写真などとともに、当該の給食の写真が載っている。
立川市の学校給食は、東・西の2つの共同調理場で調理した献立が市立小・中学校に配送される共同調理場方式だ(参照)。献立は市教育委員会のサイトで確認でき、このうち西調理場小学校給食の「2月の給食カレンダー」には、ピンクのトレイに載せられたグリコ牛乳やパン、シチューといった、投稿画像と同じと思われる写真がみられる(Bブロック2月21日)。
また、この写真は立川市学校給食共同調理場の公式Instagramアカウントにも掲載されている。
投稿画像における日本の給食は実際のものであるが、それ以外の国の「給食」は企業によるイメージ写真であった。以上の点から、検証対象の投稿は「不正確」と判定する。
なお、過去に海外ではSweetgreenによる給食のイメージ写真を用いて「ローマの学生の給食写真である」というX投稿が拡散された。この投稿については、Logically Factsがファクトチェックを行っている。
(景山千愛、大谷友也)