検証対象
参議院選挙直前の週末、政党間の討論内容を確認。防衛費の増加については立憲、共産、社民のいわゆるリベラル政党が反対の立場。国防費の大幅増を打ち出したドイツのシュルツ首相は社会民主党。安全保障環境が激変している中で、なぜ日本のリベラル政党は変われないのか。
細野豪志衆議院議員のTwitter投稿(2022年6月19日、約580RT)
判定
立憲民主党は防衛費の増加について、必ずしも反対しない立場を示している。
ファクトチェック
自民党の細野豪志衆議院議員が投稿したこのツイートでは、日本共産党、社会民主党といった他の野党と共に、立憲民主党が防衛費の増加に「反対の立場」であるとして批判している。
自民党は2022年参議院選挙公約の中で、「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指します」と、防衛費の増強に意欲を示している。
討論会での立憲の主張
細野氏が確認したという「政党間の討論」が具体的に何を指すのかは明言されていないが、このツイート時点で最も近い党首同士の討論会としては、6月18日に行われたニコニコ生放送でのネット党首討論がある。
立憲・泉健太代表の発言の中で、防衛費に関連すると思われるのは以下の2つだ。
まず立憲民主党は、安全保障に責任を持ちたいと思います。当然ながら、我が国の必要な防衛力は整備をする、そういう姿勢ですね。ですから、このウクライナ戦争で見えて来た宇宙、サイバー、電磁波、そういったことへの対応も必要だと思います。ただ一方で、何でも強い兵器を持てば強くなるというほど簡単な世界ではないと思いますので、核共有はやはり非現実的だし、愚策だと思います。まあアメリカとそもそも今、核の傘というものもある中ですから、そういうものをしっかり生かして、これまでの防衛体制をより着実に整えていくと言う姿勢です。
6月18日ニコニコ生放送「【参院選2022】ネット党首討論」より、立憲・泉代表の発言(動画33:16~)
私は総理に聞きたいんですけどね。核共有、やっぱりこれ現実的だと思えない。むしろ日本の国民を危険に晒してしまうと思うので、総理に核共有のことを聞きたい。あと、原子力潜水艦の話はですね、日本のディーゼル潜水艦というのは非常に有能で、音も静かで、非常にこの世界、日本近海においてちょうど良いサイズで機能されている。実は普通の日本の潜水艦が800億、そして原潜だと3500億円。かなり値段がかかってしまうということもあって、現実的にもこれ私日本に向かないと思うんですね。総理、この点もぜひ答えてもらえたらと思います。
同上(動画49:10~)
このように、泉氏は予算の個別の使い道については注文を付けているものの、防衛費の増加自体に反対はしておらず、「必要な防衛力は整備をする」とも述べている。
公約での表現は?
立憲民主党参院選公約の「我が国の防衛体制の整備」の項には、「総額ありきではなく、メリハリのある防衛予算で防衛力の質的向上を図ります」と書かれていて、こちらも増額そのものに全面的に反対する言い方ではない。
防衛費については、5月24日に泉氏が数字ありきでなく精査するとしつつも「増えることは肯定している」「必要だ」などと発言、26日には小川淳也政調会長が「結果として防衛費が増えることには賛成、あり得ることだ」と述べている。こうした発言について党内では異論もあったとされるが、最終的には増額の可能性を排除しない形で6月3日に公約が発表された。
泉氏は細野氏のツイートに対し、「これは誤った投稿。 立憲民主党は、あくまで自民党のような、中身も不明なまま、総額ありきの防衛費2%に反対してるのです。 立憲民主党は『必要な防衛力は整備する』との立場です。」と反論している。
細野氏はこのツイートをさらに引用し返しているが、「誤った投稿」という指摘に対する反論は見られない。
リトマスでは、細野氏事務所に対しFAXで取材文を送り、(1)細野氏が確認した討論とは具体的にいつ、どの場で行われたものか、(2)立憲民主党が防衛費増加に「反対の立場」とした根拠は討論中のどの発言か、(3)泉氏のツイートについてどう考えるかを質問したが、事務所からの返答は「twitterをご覧ください」のみだった。
共産・社民は全面反対
ツイートの中で細野氏が立憲と共に挙げた共産党は、前述のネット党首討論で防衛費(軍事費)の増額自体に反対を主張している(30:47~)。同じく挙げられた社民党は、この討論会に参加していない。
公約では、共産党は「軍事費2倍化は亡国の道」と増額を厳しく批判。社民党も「防衛力大幅増強の動きに反対」と断言している。これら2党と比べると、あくまで条件を付けているに過ぎない立憲民主党とは立場の差が大きい。
細野氏のツイートは、立憲民主党が精査無き防衛費増額には反対しているという点で一部には事実が含まれるものの、増額そのものに反対を表明しているわけではないことから、「不正確」と判定する。
(大谷友也)