検証対象

岸田首相が表紙になるはずだったTIME誌、表紙が変わっちゃったようです。 在NY日本国領事館を通じて詳細を言えないような、相当な圧力かけたんでしょうね。 ニホンが軍事大国目指してるって、本気なんだわ …
(※画像付き投稿)

一般ユーザーのTwitter投稿(2023年5月13日、約6600RT)

判定

誤り

判定の基準について

『TIME』には地域や発行形態によって元々3パターンの表紙があり、岸田首相の写真を使ったアジア版の表紙は変更されていない。

ファクトチェック

アメリカの老舗ニュース雑誌『TIME』は2023年5月9日、岸田文雄首相へのインタビューを基にした「独自:岸田文雄首相はかつて平和主義だった日本を軍事大国に変えようとしている(Exclusive: Prime Minister Fumio Kishida Is Turning a Once Pacifist Japan Into a Military Power)」と題する特集記事を公開(アーカイブ)。記事中には次号(5月22日/29日号)の表紙画像も掲載され、岸田首相の写真に「岸田文雄首相は数十年続いた平和主義を放棄し日本を真の軍事大国にしたがっている(PRIME MINISTER FUMIO KISHIDA WANTS TO ABANDON DECADES OF PACIFISM—AND MAKE HIS COUNTRY A TRUE MILITARY POWER)」というテキストが載せられている。

この記事と表紙は日本時間翌10日、『TIME』のTwitter公式アカウントからも紹介されている

しかしその後、『TIME』のサイト上で見られる記事タイトルは「独自:岸田文雄首相はかつて平和主義だった日本に国際舞台でより積極的な役割を与えようとしている(Exclusive: Prime Minister Fumio Kishida Is Giving a Once Pacifist Japan a More Assertive Role on the Global Stage)」に変更された

林芳正外務大臣は12日の記者会見で、『TIME』側に「表題と中身に乖離があるということを指摘した」と明らかにしているが、タイトル変更がこの指摘を受けて行われたものなのかは定かではない。

複数のバージョン

検証対象のツイートでは、記事タイトルだけでなく、雑誌の表紙そのものも全面的に変更されたと主張している。

投稿者がスクリーンショット画像で提示しているのは、『TIME』公式アカウントによる11日のツイートだ。そこでは、「TIMEの新しい表紙(TIME’s new cover)」として、インドの俳優ディーピカー・パードゥコーンさんの写真を使った表紙画像が紹介されている。

しかし、複数の表紙画像が発表されているからといって、それは必ずしも表紙の差し替えを意味するわけではない。『TIME』にはそもそも地域や発行形態によって複数のバージョンが存在するからだ。

紙媒体の『TIME』は本国アメリカ版の他に、欧州・中東・アフリカ版アジア版南太平洋版の4種類。これに加え、それぞれにデジタル版もある。

これらの各バージョンの表紙は必ずしも全て同じではなく、地域ごとに異なっていることも少なくない(参照)。問題の5月22日/29日号も、アメリカ版(アーカイブ)などではイギリス国王チャールズ3世の戴冠式の写真が表紙になっている。

『TIME』のウェブサイトより。左上のドロップダウンメニューから各地域版のページに移動できる。画像はアメリカ版・紙媒体(アーカイブ

3パターンの表紙

岸田氏の表紙画像が発表されたのは、このうちアジア版の紙媒体(アーカイブ)だ。特集記事のタイトルが変更されて以降も、『TIME』のサイト上には岸田氏の表紙画像が依然として掲載されていて、「真の軍事大国(A TRUE MILITARY POWER)」云々のテキストもそのまま見ることができる。『TIME』はNHKの取材に対し、「出版される雑誌の表紙や記事は変わっていない」とコメントしている

『TIME』5月22日/29日号のアジア版・紙媒体(アーカイブ)。岸田氏の写真や、「真の軍事大国」のテキストを使った表紙が掲載されている

一方、パードゥコーンさんの表紙はデジタルのインターナショナル版アジア版で使われていることが確認できる。これらの版の表紙が元々岸田氏だったという形跡は見当たらず、変更は特に無いようだ。

岸田氏版が発売

19日、『TIME』5月22日/29日号(アジア版・紙媒体)が発売され店頭に並ぶと、表紙には当初発表された通り岸田氏の写真と「真の軍事大国(A TRUE MILITARY POWER)」のテキストが使われ、変更が無いことが実際に確認できるようになった。

以上のように、岸田氏の表紙起用が発表されていたアジア版・紙媒体の『TIME』は実際に発売され、それ以外のバージョンでは当初から別の表紙だったため、「表紙が変わっちゃった」とする検証対象のツイートは「誤り」と判定する。

(大谷友也)

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