検証対象

ロシア、千島列島に超音速ミサイルを追加配備。岸田の挑発に対抗。官邸まで1分で到達する模様…

まとめサイト「TweeterBreakingNews-ツイッ速!」の記事タイトル(2023年3月24日)

判定

誤り

判定の基準について

ロシアがミサイルを配備したとされるパラムシル島から1分で首相官邸に到達する兵器は存在しない。また、このミサイルの射程は官邸までの距離よりもはるかに短い。

ファクトチェック

まとめサイト「Tweeter Breaking News-ツイッ速!」(以下「ツイッ速」と表記)によるこの記事(アーカイブ)は、匿名掲示板「5ちゃんねる」の3月23日のスレッドを引用。韓国紙「朝鮮日報」の同日の記事(24日更新、ポータルサイト「daum」を経由)を翻訳した内容と、それに対する匿名ユーザーの反応をまとめている。

「ツイッ速」の記事はTwitterで約1900RTと拡散されている。

千島列島に配備されたミサイル

ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は3月22日、国防省の会合の中で、千島列島(ロシア名クリル列島)北部のパラムシル島(幌筵島)における地対艦ミサイル「バスティオン」の配備について言及。「クリル列島に沿って連続的な管理地帯を形成するために、2022年12月からパラムシル島でバスティオン沿岸防衛ミサイルシステム師団が戦闘任務に就いている」と述べた(ロシア国防省記事アーカイブ)。

バスティオンは2022年12月にパラムシル島に配備されたと発表されている(同アーカイブ)ほか、北方領土の択捉島や千島列島中部のマトゥア島(松輪島)にも既に置かれている(参照)。

ショイグ氏の発言について、報道各社の解釈は分かれている。上述の朝鮮日報は、12月の発表は予告であって今回初めてパラムシル島にバスティオンが配備されたと伝えている。一方で、読売新聞は、バスティオンは12月に既に実戦配備済みであり今回の発表はその「アピール」だとする。また、ロイター通信は12月今回の2度とも同じように「配備」と報じていて、文字通りに取れば既に配備されているミサイルが今回さらに追加されたことになる。

いずれにせよ、「ツイッ速」が「官邸まで1分で到達する」としているミサイルは、このパラムシル島のバスティオンということになる。

「1分で到達」は不可能

しかし、このバスティオンがパラムシル島から首相官邸まで「1分で到達する」ということは考えられない。

両地点間の距離は2000km以上。1分で到達させるためには、ミサイルを時速12万km以上、マッハ数にして100以上で飛ばす必要がある。ロシアが2018年に発表した新型兵器(極超音速滑空体)「アバンガルド」でもその速度はマッハ27と主張されているように、マッハ100を超えるとされる兵器は現状世界に存在しない。なお、マッハ5以上のミサイルは「超音速」ではなく「極超音速」に分類される。

パラムシル島と首相官邸との距離(Googleマップより)

アメリカのシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、バスティオンの速度はマッハ2~2.2と、マッハ100には到底及ばない。そもそもこのミサイルは射程が約300km別の資料では500km)で、パラムシル島からでは日本の領土に届くことすらできない。

以上のことから、今回千島列島に配備されたミサイルが「官邸まで1分で到達する」とする「ツイッ速」の記事タイトルは「誤り」であると判定する。

議員も拡散

元総務大臣で衆議院議員(立憲民主党)の原口一博氏は3月25日、「ツイッ速」記事タイトルと同じ文面を用いて「官邸まで1分」に言及。「要確認だ」と述べている

リトマスでは3月28日、原口氏に取材し、「官邸まで1分」という記述の根拠などを尋ねた。

取材に対し原口氏は、あくまで「要確認」としたのであり事実として述べたのではないが、公表されている情報からも「官邸まで1分」は事実の可能性があると主張。ミサイルの配備場所や種類は不明だとして、仮に南樺太のユジノサハリンスクと官邸との距離を取り約1280km、配備されたのがマッハ27のアバンガルドだとして計算すると、1280km÷時速270000km≒0.00474074時間(約17秒)になると説明した。

しかし、上述のようにロシアはバスティオンミサイルをパラムシル島に配備したとして、ミサイルの場所も種類も発表している。さらに、マッハ1は条件により異なるが時速1000km台であり、マッハ27を時速270000kmと換算するのは誤りだ。

また、原口氏は、「ツイッ速」の記事タイトルと文面が一致しているのは情報源の秘匿性を高める目的で一般に流通している言い回しにあえて寄せたためだとして、ツイートの情報源を明かすことはできないが、「ツイッ速」を直接情報源としているわけではないと否定した。

取材後、原口氏はYouTubeの動画配信でツイートについて改めて説明し、到達時間の計算を3分と変更している。

(大谷友也)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事を読んでよかった、役に立ったと思われた方は、ぜひ「ナットク」やシェアボタン(右下)をクリックして、サポーターになっていただけると嬉しいです。
記事で気になるところがありましたら、こちらからコメントください。
新しいファクトチェック記事のお知らせメールを希望する方はこちらで登録できます。