検証対象

グレタさん逮捕のリハーサル動画、流出…

まとめサイトShare News Japanの記事タイトル(2023年1月19日)

判定

誤り

判定の基準について

根拠としている動画はロイター通信が報じたものの切り抜きで、流出したものではない。動画に写っているのは拘束手続き中の待機の場面。地元警察は映っている警察官がエキストラであるという情報を否定している。また、グレタ・トゥーンベリ氏は拘束されたが逮捕されていない。

ファクトチェック

2023年1月17日、ドイツ西部のリュッツェラート村近くで、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリ氏が警察に一時拘束された。リュッツェラート村は褐炭の露天掘り鉱山の拡大に伴い廃村の計画が進められている。この廃村に反対する環境活動家による抗議活動が2年に渡り続いていて、1月11日から警察が強制排除に乗り出していた。同氏の拘束は、抗議活動の参加者と共に鉱山の危険な地域に立ち入るのを防ぐためだったと報じられている。

Share News Japanの1月19日の記事(アーカイブ)では、トゥーンベリ氏の一時拘束を伝えるBBCのツイートと、それに対するリプライとして「リハーサル」とする35秒の動画の付いたツイートが引用されている。

この動画には、両脇を2人の警察官に抱えられたトゥーンベリ氏が、時折笑顔を見せながら報道関係者と見られる人物に写真を撮られる様子などが映っている。ツイートは「リハーサル」が誰によるものかは特に言及していないものの、トゥーンベリ氏、警察、またはメディアによって「逮捕」が作り出されたという主張のようだ。

記事はShare News JapanのTwitterアカウントによる投稿で約4300RTを獲得している。また、流出とは言っていないものの「グレタさん逮捕のリハーサル」として1月18日の別のアカウントによる同じ動画付きの投稿も約4100RTされている。

別のアカウントによるツイートのスクリーンショット

動画は元々公開のもの

しかし、引用されているツイートやShare News Japanの記述は事実に基づかない内容だ。ロイター通信は引用された動画の前後の場面を含む1分ほどの動画をウェブで報じていて、「流出」したものではない。

切り取られる前の動画には、他の活動家たちと共に座り込みを行うトゥーンベリ氏と、そのグループを取り囲む警察官たちも映っている。問題の拘束シーンの直前の会話も記録されていて、1人の警察官がトゥーンベリ氏の左側に立つ別の環境活動家に対し「有名になるね」と話しかけ、その環境活動家がトゥーンベリ氏に「(一緒に)自撮りするかい?」と言って笑い合っていることが分かる。(ロイター通信の字幕は自動書き起こしのため実際の発言と異なる。)

ロイター通信はファクトチェック記事で「メディアが逮捕を捏造した」というFacebook投稿を誤りとしている。

警察も否定

また、ドイツ警察は動画中に映っている警察官が「グレタ・トゥーンベリ氏のためのエキストラ」であったというインターネット上の投稿を否定している。さらに、警察はトゥーンベリ氏を逮捕したわけではなく、拘束し、身元の確認の後に解放したと明らかにしている。独紙Bildによれば、身元確認は警察が用意したバンで行われていたが、この時バンが他の活動家でいっぱいであったためトゥーンベリ氏らが入れず、しばらく待つ時間が生じたという。現地で写真を撮っていたへシャム・エルシェリフ氏は、報道側から写真を撮るために待つよう警察に頼むようなことはなかったとTF1 INFOの取材に答えている。

現地のアーヘン警察は、この時警察官らがリラックスした雰囲気だったことについて、このグループが抵抗しなかったため厳しい対応を取る必要がなかったとしている。また、有名人だからといって特別扱いすることもないともコメントした。

トゥーンベリ氏は自身のツイッターに、警察に拘束されたがその後夕方になって解放されたと投稿している。

グレタ・トゥーンベリ氏のツイート

ロイター通信は一時トゥーンベリ氏が逮捕されたと報じていて、それを配信したメディアもあった(参照12)が、その後は拘束と伝えている。Twitterでの反応を見ると、その後も警察に連れられるトゥーンベリ氏の映像を見て逮捕と勘違いした人は多かったようだ。

以上のように、動画は逮捕のリハーサルをしている様子を撮影したものではなく、トゥーンベリ氏はこのとき拘束されたが逮捕はされていない。また、この動画が流出した事実もないため「誤り」と判定する。

(高倉佳子、大谷友也)

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