検証対象

安倍氏「ロシアにはだまされた感あった」 NATO拡大で、侵攻は批判:時事ドットコム https://t.co/92eL9ZJh0q @jijicomより 政治の世界、騙されたと言うのは自分が馬鹿だと自白するようなもの。結果に対して責任を取るべき。騙された愚か者はこれ以上日本政治に口出すするな。

山口二郎氏(政治学者)のTwitter投稿(2022年6月4日、約900RT)

判定

ミスリード

判定の基準について

「ロシアにはだまされた感があった」という安倍氏の発言は、安倍氏がロシアにだまされたという意味ではなく、ロシアは西側諸国にだまされたと感じているという意味であると考えられる。

ファクトチェック

安倍氏発言はロシアの思考の説明

山口氏のツイートは、時事通信の記事「安倍氏『ロシアにはだまされた感あった』 NATO拡大で、侵攻は批判」(2022年6月4日)への反応。記事では、安倍晋三元首相が4日に京都市で行った講演について、以下のように述べられている(強調は筆者による)。

 安倍晋三元首相は4日、京都市で講演し、ロシアのウクライナ侵攻を批判する一方、「ロシアにはだまされた感があった」との見方を示した。安倍氏は「プーチン大統領と27回首脳会談を行った。彼は米国に大きな不信を持っている。北大西洋条約機構(NATO)の拡大だ」と説明した。
 安倍氏は「ベーカー米国務長官(当時)は東西ドイツが統一しても管轄権を広げないと言った」と指摘。「その後、どんどん拡大して、ハンガリー、チェコ、バルト3国にも広がり、いよいよウクライナまできてしまうのではないかと(ロシアは)思った」と述べた。
 一方、安倍氏はウクライナ侵攻については「だからといって、あんなことをやっていいわけではない。彼らがどう考えているかを理解するために私は述べている」と語った。

時事ドットコム「安倍氏『ロシアにはだまされた感あった』 NATO拡大で、侵攻は批判」(2022年6月4日)

この講演は自民党京都府連内部の会合で行われたものであり、その正確な発言内容を直接知ることはできない。しかし、記事で述べられている限りでは、安倍氏は自身がロシアにだまされたと言ったわけではなく、アメリカやヨーロッパ諸国にだまされたと認識するロシア側の思考を説明する中で「ロシアには(欧米に)だまされた感があった」という表現を使ったと考えられる。

時事通信の記事は断片的な言葉を見出しに用いたため誤解を招く余地があるが、記事本文を読めばその意図が読み取れるようになっている。

安倍氏は過去にも同様の発言

6月の講演に先立ち、安倍氏は3月にもこれとよく似た発言をしている(強調は筆者)。

 プーチン氏は米国に強い不信感を持っています。その不信感がどこから来るかといえば、NATO(北大西洋条約機構)の拡大です。東西ドイツ統一についての議論の中で1990年、米ブッシュ政権のベーカー国務長官がソ連のゴルバチョフ党書記長(肩書は全て当時)と会い、NATOについて「1インチたりとも範囲を東方に拡大しない」と述べています。
 しかしNATOはポーランド、チェコ、バルト3国とどんどん拡大しました。これについてロシアは「だまされた」という思いを持っているわけです。

ダイヤモンド・オンライン「安倍晋三元首相に直撃、なぜ非核三原則に抵触しても核共有の議論に踏み込むのか」(2022年3月23日)

ここでは、安倍氏は明確にロシア側の思考として「(欧米に)だまされた」という意味で発言している。文脈も類似していることから、6月の講演での発言もこれと同じ意味である可能性が高い。

誤解を招くツイート

安倍氏は首相時代、ロシアのプーチン大統領とたびたび会談するなど親密な関係をアピールしており、この融和的な態度への批判はロシアによるウクライナ侵攻以降特に強まっていた。

山口氏は時事通信の「ロシアにはだまされた感があった」という見出しをどう理解しているか直接は述べていないが、「結果に対して責任を取るべき」「騙された愚か者はこれ以上日本政治に口出すするな(原文ママ)」といった批判はロシア政府に向けてのものとしては不自然であり、読み手は「安倍氏が自身の失態を認めた」という恐らく誤りである解釈をする可能性がある。したがって、このツイートは「ミスリード」であると判定する。

なお、リトマスでは山口氏にメール取材を行い、上述の検証結果に対する見解などを質問している。返答があり次第、本稿に追記する。

(大谷友也)

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