検証対象

中国は引き出しを停止した銀行を怒った国民から守るために戦車部隊を投入したようです。これが中国式バブル崩壊。日本のバブル崩壊x20倍が始まったばかり。
(※動画付き投稿)

エミン・ユルマズ氏(エコノミスト)のTwitter投稿(2022年7月21日、約8300RT)

判定

根拠不十分

判定の基準について

ツイートに添付された動画は、抗議活動が起きた河南省ではなく、山東省で撮影されたもの。動画に映っている戦車が銀行を守るために投入されたという根拠は見当たらない。

ファクトチェック

河南省鄭州市では中国人民銀行など地元の4つの銀行で、2022年4月以降、預金を引き出せなくなるトラブルが発生している。7月10日には預金者などが抗議活動を行い警察と衝突して多数のけが人が出ている。この一連の騒動に関連して拡散されたのが今回のツイートだ。

動画には市街の道路上で列をなす戦車が映っているが、市民はその様子を沿道で見物したりスマートフォンで撮影したりしていて、特段衝突があるような様子はない。

撮影場所は別の省

エミン氏のツイートに添付された動画は別のユーザーのツイートからの引用で、それもまた別の出典からの転載らしく、画質はかなり不鮮明だ。オリジナルの出典は不明だが、少なくとも7月18日の段階で同じ動画のより鮮明な画質のものが投稿されている

動画の背景に注目すると、黄色くライトアップされた建物が見える。これは、抗議活動が行われた鄭州市から東に約600km離れた山東省日照市にある、全季酒店(Ji Hotel)日照灯塔海浜風景区店の建物と酷似しているため、ここが動画の撮影地であるようだ(サイトによっては同じ建物が漢庭酒店(Hanting Hotel)日照火車站店山水大酒店の名前で登録されている)。

動画のスクリーンショット
別のシーンの拡大図。建物の入口には「全季酒店」と書かれているように見える
ホテル予約サイトagodaに掲載されている日照市内のホテルの写真

周辺には多数の基地

公開情報等を元に作られた中国の軍事施設のマップによると、抗議活動のあった鄭州市周辺にはいくつもの基地がある。仮に軍が銀行を守るために戦車を出動させる場合、約600km離れた山東省日照市からではなく、鄭州市周辺の基地から派遣するのが自然だろう。

中国人民解放軍基地および施設」マップを基に筆者作成

軍事演習と関連か

動画に映っていたホテル(全季酒店)のスタッフは、AP通信の取材に対し、毎年行われる軍事演習の一環として7月17日に戦車が通ったと証言している。

また、France24の取材でも、動画が撮影された通りにある別のホテル(錦江之星(Jinjiang Inn)日照海浜五路店)のスタッフが同様の趣旨の証言をしている。なお、France24はこの証言を7月14日から16日に黄海沖で行われると予告されていた演習と結び付けているが、日付にずれがあり、実際に関連があるかは不明だ。

とはいえ、動画の撮影地点が抗議活動が行われた河南省鄭州市からかけ離れていることから考えて、戦車が銀行を守るために投入されたというのは「根拠不十分」だと判定される。

なお、リトマスではエミン氏が取締役を務める複眼経済塾を通じ取材を申し込んでいるが、本稿執筆時点で返答は得られていない。

(小俣杏香、大谷友也)

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