検証対象
UNRWAの日本人幹部・清田明宏氏「ガザは天井のない監獄!」「ガザの子供達は戦争しか知らない!」「早く人道支援を!もっと人道支援を!」 共産党「UNRWA拠出金再開せよ!」 れいわ「UNRWA拠出金再開せよ!」 ↓ 現実のガザ「奥様、最近の売れ筋のネックレスはこちらでございます」(キンキラキン〜)
飯山陽氏(イスラム思想研究者)のX投稿(2024年2月16日、約2500リポスト)
(※海外ユーザーの動画付き投稿を引用)
判定
この動画は元々2022年5月に投稿されたもので、イスラエルによるガザでの空爆よりも前の光景を映している。現在この店の周辺は空爆により大きな被害を受けていることが確認できる。
ファクトチェック
この投稿はイスラム思想研究者で麗澤大学客員教授の飯山陽氏によるもので、海外の一般ユーザーによる、パレスチナ・ガザ地区の貴金属店の動画を添付した投稿を引用している。飯山氏は、ガザへの人道支援や国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への拠出金再開を求める意見を批判する文脈で、「現実のガザ」としてこの動画を示している。
UNRWAに関しては、2023年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃に職員が関与した疑いがあるとして、2024年1月から日本政府からの拠出金が停止されている。
ガザ攻撃以前の動画
しかし、そもそも飯山氏が引用した海外ユーザーの投稿が行われたのは2022年5月であり、ハマスの攻撃やそれに続くイスラエルによるガザでの攻撃よりも前のことだ。このユーザー自身は、飯山氏の投稿の30分ほど前に「10月7日にハマスがイスラエルへの戦争を始める前、ガザでは金の取引が盛んだった」という文章と共にこの過去の投稿を引用投稿していた。
この動画は元々、貴金属店「ラミ・アル・ダボス・ジュエリー」のFacebookアカウントから2022年5月に投稿されたもので、店の外観やショーウィンドー、店内の商品の様子などが紹介されている。
Facebookのアカウント情報によれば、店はガザ市北部の中心街であるオマール・アル・ムフタール通りの貴金属店が立ち並ぶエリアに位置している。Facebookの他にInstagramやTikTokのアカウントがあることが確認できるが、いずれも投稿はハマスによる攻撃が始まった2023年10月7日の前日~3日前を最後に行われておらず、現状を窺うことはできない。
周辺は空爆で荒廃
オマール・アル・ムフタール通りの最近の様子は、カタールの衛星テレビ局アルジャジーラが伝えている。2023年12月に公開された動画には、空爆によって多くの建物が破壊され荒廃した通りの様子が映し出されている。攻撃前に撮影されたという一般ユーザーによるYouTube動画と照らし合わせると、問題の店自体は遠くにありはっきりと確認できないものの、周辺の建物は激しく損傷しているように見える。
店は2023年中頃に改装を行なったらしく、外観はXに転載された動画と違って黒の大理石を使ったものになっている。
また、裏手に位置するグレート・オマリ・モスクやカイサリヤ市場が空爆で破壊されている(参照1、2)ことからも、この店が現在営業できない状態になっている可能性は高いと考えられる。
以上のように、Xに転載された動画はイスラエルがガザを攻撃する前に撮影されたもので、現在の状況とは大きく異なっている。飯山氏による投稿は、動画がいつのものかは言及していないものの、「現実のガザ」という表現が現状に対する誤解を与えるため、「ミスリード」と判定する。
(大谷友也)