検証対象

今日一番笑った記事… グレ太🗣️戦争は地球にとって常に悪いものです。環境に優しい兵器に変えていかなければならない。 バッテリー駆動の戦闘機や生分解性のミサイルなど新しいコンセプトが沢山ある。 もちろん、このナンセンスな事を止めるために文字通り誰もができることは、例えば果樹園や農場への道を塞ぐことだ。そうすれば工場が重戦車に蹂躙されることはない。 🐸筋金入りの狂気!環狂破壊!🤣
(※動画付き投稿)

一般ユーザーのX(旧Twitter)投稿(2023年10月23日、約1900リポスト)

判定

誤り

判定の基準について

これは映像や音声を加工し作られた偽の動画で、グレタ・トゥーンベリ氏がこのような発言をした事実は無い。

ファクトチェック

検証対象の動画は約36秒で、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリ氏がイギリス国営放送BBCの番組「The One Show」に出演し次のように話しているかのような様子が字幕と共に映っている。

War is always bad, specifically for the planet. If we want to continue fighting battles like environmentally conscious humans, we must make the change to sustainable tanks and weaponry. There are so many new concepts for battery powered fighter jets that can carry many more missiles, biodegradable missiles of course. Something literally everybody can do to stop this nonsense, is for example to block the roads to gardens and farms, so the plants don’t get overrun by these heavy heavy tanks. Hand grenades…
(※筆者訳:戦争はいつだって、特にこの星にとって悪いものです。環境意識の高い人たちのように戦闘を続けたいと思うのなら、持続可能な戦車や兵器へ変化を起こさなければいけません。新しいコンセプトはたくさんあります。より多くのミサイル、もちろん生分解性のミサイルを搭載できる、バッテリー駆動の戦闘機などです。このナンセンスを止めるためまさに誰もができることと言えば、例えば庭や農場への道を塞いで、植物(※訳注:検証対象の投稿で「工場」とあるのは誤り)が重い戦車に踏み荒らされないようにすることです。手榴弾…)

画面左上にはBBCのロゴがあり、右下にはロシアのニュース評論番組「60 минут」などの複数のロゴなどが重なっている。「60 минут」でこの映像が放送された事実があるかは不明だ。

BBC出演動画を加工

動画では声や口の動きに一見違和感は無く、まるでトゥーンベリ氏が本当にこのような発言をしたかのように見えるが、実際は映像・音声共に加工されたものである。

加工前の元動画は、トゥーンベリ氏が2022年10月に「The One Show」に出演した時のもの。BBCの公式YouTubeチャンネルから実際の動画を見ることができる

途中、トゥーンベリ氏が以下のように語る場面は検証対象の動画と酷似しており、声と口の動きだけが異なるものの、人物の動きやカメラアングルなど、映像の他の部分は完全に一致している。

Yeah, I mean, of course, when you’re a child, when you’re like eight or ten or eleven years old, there is not much that you can really do to make a big difference, so then you start small. I started with turning off the lights at home to save energy. And that led to another thing, which led to another thing, and eventually I stopped flying, I became vegan, and so on. And then I got my parents to do that too because I started talking to them, and they started to listen to my concerns. And by making them change, it also gave me the sort of courage that I needed to move on to start school striking.
(※筆者訳:もちろん子供の頃、8歳、10歳、11歳という頃は、大きな変化を起こすためにできることというのはあまり多くないので、小さなことから始めることになります。私の場合、家の電気を消してエネルギーを節約することから始めました。するとそれが別のことにつながり、さらにまた別のことにつながって、ついに私は飛行機に乗るのを止め、ヴィーガンになりました。そして次に、両親にも同じことをしてもらいました。両親と話をするようになったら、彼らも私の懸念に耳を傾けてくれるようになったからです。両親を変化させたことで、学校ストライキに取り掛かるためのある種の勇気も得ることができました。)

Greta Thunberg on how to tackle climate anxiety | The One Show – BBC – YouTube
左:検証対象の動画「specifically」と言う場面 右:BBCの動画「you’re」と言う場面
同じく、それぞれ「carry」「stopped」と言う場面
同じく、それぞれ「farms」「courage」と言う場面

人工知能(AI)を利用した「ディープフェイク」と呼ばれる高度な偽動画は、近年のAI技術の進化によりますます高度化し、作成も容易になってきている。本人の声を基に偽の音声を作成したり、それに合わせて口の動きを加工したりといったことも自然にでき、今回の動画もこのAI技術を使って作られたものと考えられる。

「風刺」として投稿

検証対象の動画の右下には複数の文字やロゴなどが重なっていて分かりづらくなっているが、よく見ると「SATIRE(風刺)」という文字が見える。事実ではない架空の内容をあえて投稿していることを示す言葉だ。

更にさかのぼると、検証対象の投稿の数日前に、同内容の動画のより長いバージョンが海外ユーザーによって「#satire」というハッシュタグと共に投稿されていることが分かる。こちらの動画では右下のロゴや「SATIRE」の文字は比較的見やすく表示されているが、動画の転載が繰り返される内に別のロゴが加えられるなどして、「風刺」の意図が分かりづらくなっていたようだ。

海外ユーザーによる投稿(一部ぼかし加工)

なお、トゥーンベリ氏本人は目下のイスラエルとハマスの戦闘に関して、パレスチナやガザへの連帯と共にハマスへの非難を表明し、即時停戦を呼び掛ける投稿を行っている。

今回の偽動画についてはIndia TodayPolitiFactSnopesなどがファクトチェック記事を発表。日本でも日本ファクトチェックセンター(JFC)が検証し「誤り」と判定している。また、AFP通信の検証では、専門家による動画の不審点の解説もされている。

(大谷友也)

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