検証対象

彼らはフランスを憎み、フランス国民の税金で暮らしている。日本でも日本を憎み、日本国民の税金で暮らしている外国人が多くいる。彼らが日本にいる正当性はなにもない。
(※動画付き投稿)

一般ユーザーのX投稿(2024年1月28日、約5300リポスト)

判定

根拠不十分

判定の基準について

この動画はフランスで撮影されたものではなく、モロッコにおけるフランスに対する抗議デモの様子である。

ファクトチェック

投稿された動画では、シュプレヒコールを上げる群衆の中で、ヒジャブ姿の女性がフランス国旗の描かれた紙を燃やす様子が映されている。投稿者はこの女性たちについて「フランス国民の税金で暮らしている」とし、フランス人あるいはフランスで暮らす移民と示唆している。

動画の場所はモロッコ

動画の右下には、手前に立つ人物の肩と見られる場所に、モロッコ国旗と同じ赤字に緑の五芒星の図像があしらわれたワッペンのような物が見える。これはモロッコの警察の制服に付けられているワッペンと一致している。

左:検証対象添付動画より 右:モロッコ警察公式Xより それぞれ赤枠と拡大図は筆者による

また、投稿されたのと同じ場面が映ったより長い動画が、2023年10月にモロッコの都市タンジェのメディア「TanjaNews TV」によってYouTube上に投稿されている。動画のタイトルはアラビア語で「タンジェのフランス総領事館前でフランス国旗を燃やす(※Google翻訳による)」とされている。

このYouTube動画の22秒以降に映る建物には、モロッコに拠点を置く銀行「BMCI」の看板が見える。Googleマップから、この建物はタンジェのフランス総領事館の向かい側にあることが確認できる。よって、動画はモロッコで撮影されたものと分かる。

左:TanjaNewsTVのYouTube投稿より 右:Googleマップより
在タンジェフランス総領事館 Googleマップより

マクロンのイスラエル訪問に抗議

モロッコのニュースサイト「Achkayen」が報じたところによると、このデモはパレスチナ・ガザ地区での紛争においてイスラエルを支援するフランスや、デモと同日にイスラエルを訪問したフランスのエマニュエル・マクロン大統領に対する抗議として行われたものである。主催した人権団体のFacebook投稿では、デモの呼びかけが確認できる。

モロッコはフランスの旧植民地で現在もつながりが深いが、既に独立しており、国民が「フランス国民の税金で暮らしている」ということは無い。デモの参加者が皆モロッコ国民であるとは言い切れないものの、検証対象の投稿は根拠に乏しく、「根拠不十分」と判定する。

なお、これと同じ動画は海外でもパリでの出来事として拡散されていて、Lead Storiesロイター通信がファクトチェック記事でモロッコで撮影されたものであると指摘している。

(高倉佳子、大谷友也)

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