検証対象

50万人の不法移民がリビアからイタリア・仏に移動中。 この動画で何か気がつくことは無いか? 重要ポイントは2点。 ・女性がいない ・若い男ばかり 金もない、女もいない彼らが欧州で何をするかは明らか。日本人は移民の怖さを知るリアリストであれ。
(※海外ユーザーの投稿動画を引用)

一般ユーザーのTwitter投稿(2023年6月25日、約1万RT)

判定

不正確

判定の基準について

この動画に映る人々は不法移民としてリビアから強制送還させられているが、イタリアやフランスではなく、エジプトへ送られている。人数も数百から数千人で、50万人ではない。

ファクトチェック

この動画は、2023年6月25日にある海外ユーザーが「50万人の軍隊がリビアからイタリアに侵攻しようとしている」などのコメントと共に投稿したものの引用である。銃を持った兵士が監視する中を列を作って歩く無数の人々の姿が映っており、そのほとんどは男性であるように見える。

同じ動画はコラムニストのヴィズマーラ恵子氏も引用して「リビアからイタリアに侵略してこようとしている50万人の不法移民者ら」としてツイートし(現在は削除)、5000RT以上を獲得している。

さらに、検証対象ツイートの投稿者は、同じ海外ユーザーが6月25日に投稿した同じような光景の別の動画も引用し、「やはりリビアからイタリアへの移民らしい。」と述べている。

投稿者がツイートした別の動画

撮影地はリビアのエジプト国境沿い

これら2本を含め、同様の複数の動画をフランスのニュースチャンネル「France 24」がファクトチェックし、一連の動画の撮影地点をムサイドと特定している。ムサイド(アムサードとも表記される)はリビア北東部のエジプト国境沿いに位置する街だ。ベルギーの週刊誌「Knack」のファクトチェックでは、背景の建物などから撮影地点をさらに細かく特定している。

また、TikTokでは6月2日に検証対象と同じ動画のより縦に大きいバージョンが投稿されており、元々は画面上部に「امساعد(ムサイド)」の誤字と思われる「امسااعد」という字が書かれていたことが分かる。

エジプトへの送還

このムサイドでの出来事については、地元メディア「アクバルリビア24」や国際衛星テレビ局「アルジャジーラ」が6月1日付で報じている。記事によれば、密入国・人身売買ネットワークに対する作戦の一環として、治安部隊が不法に入国したとされる数百人のエジプト人をムサイドから本国へ送還したという。

「アクバルリビア24」の取材に対し、治安部隊の関係者は、これまでにムサイドで1500人の移民が解放され、うち700人がエジプト人だと述べている。これまでに500人本国に送還され、残り200人も身元を確認し次第送還するという。

一方、ロイター通信の6月4日付記事によるエジプトの治安当局関係者の話では、発見された移民は4000人でうち不法入国だったのは2200人とされている。送還されたのはこの2200人で、そのほとんどがエジプト人だという。

また、この記事の中では、リビアは50万人の移民を抱え、その多くがヨーロッパへの渡航を希望しているという記述がある。検証対象のツイートにおける「50万人の不法移民」という主張は、このような数字との混同の可能性がある。

今回のような、リビア当局の移民に対する強制的な排除策には批判もある。AP通信は、今回の送還について報じると共に、リビアにおいて移民に対する非人道的な取り締まりや虐待が行われているとする指摘を伝えている。

いずれにせよ、一連の動画に映るのはリビアで不法移民として取り締まられた人々であることは正しいものの、移動先はイタリアやフランスではなくエジプトであること、人数も数百から数千人で「50万人」とは乖離があることから、検証対象のツイートは「不正確」である。

(大谷友也)

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