検証対象
“ドイツの高速道路、寒さで電気自動車が充電切れで通行止め スマートな電気自動車” 。。。😱
一般ユーザーのTwitter投稿(2023年12月10日、約1500リポスト)
(※画像付き投稿)
判定
この画像は2011年、アメリカ・シカゴの高速道路で雪により立ち往生した車列を写したもの。写っているのが電気自動車だという情報は確認できない。
ファクトチェック
投稿に添付された画像では、雪の積もった道路上で動けなくなったと見られる多数の自動車の写真の下に、「ドイツの高速道路は寒さの中で充電切れになった電気自動車のせいで封鎖されている。電気自動車を持つのは実に賢いことだ」という英語の文が書かれている。
2011年、米・シカゴの写真
この写真は元々AP通信が報じたもので、2011年2月2日、ドイツではなくアメリカ中西部・シカゴの高速道路で撮影された。AP通信の説明文は、シカゴを襲った記録的暴風雪により数百台の車が最大12時間立ち往生したというもので、電気自動車に関する記述は見られない。
アメリカ気象局の記録にあるように、この日までにシカゴを含む地域は大雪に見舞われ、特に前日2月1日の午後から2日早朝にかけては記録的な暴風雪となっていた。この時記録した24時間の積雪量20.0インチ(約50.8cm)は、現在までのシカゴでの最大記録となっている(参照)。
報道(1、2、3)によれば、立ち往生は帰宅ラッシュ時に立て続けに起きた複数の事故をきっかけに始まったという。車が渋滞する中に雪が降り積もることで状況は悪化し、最終的に700~900台の車が動けなくなった。燃料切れを起こした車も多数あったとされているが、充電切れになった電気自動車があったかどうかの情報は見当たらない。
アメリカでは近年電気自動車の普及が徐々に進みつつあり、2022年時点で販売シェアは7%に達しているが、2011年には1%にも満たない(参照)。そのため、当時動けなくなった車のほとんどはガソリン車だったと考えられる。
以上のように、これはドイツではなくアメリカの出来事であること、電気自動車の充電切れは無関係である可能性が高いことから、検証対象の投稿は「誤り」と判定する。
なお、同様の検証はAFP通信も行っているほか、同じ写真を使った「暴風雪の中3時間いると電気自動車のバッテリーは完全に切れる」という言説についてもミスリーディングと判定している。
充電切れになるまでの時間は?
日本自動車連盟(JAF)は2021年、大雪での立ち往生を想定した電気自動車の実験を実施している。
車内の暖房使用による電力消費を調べたテストでは、エアコンを十分に使用した場合、バッテリー残量70%の状態から約9時間半で10%にまで低下している。電気毛布を使うなどして暖房を控えると、車内の快適性は低下するものの、バッテリー低下はより抑えられている。
また、車体が雪で埋もれた場合の車内の二酸化炭素濃度を調べたテストでは、電気自動車の方がガソリン車よりも濃度上昇を抑えられ危険が少ないという結果となっている。
(大谷友也)