検証対象
電池の寿命が尽きた電動スクーターの墓場 バッテリーを交換するのは非常に高価な為、バッテリーの寿命が尽きた電動スクーターは放置され、処分するのも危険で費用がかかる。 環境に配慮した電動バイクの末路は環境破壊でしか無かった…🐸
一般ユーザーのTwitter投稿(2023年4月9日、約5100RT)
(※動画付き投稿)
判定
これは中国の電動シェア自転車で、供給の過多などによる事業上の理由で放棄されたと考えられる。
ファクトチェック
投稿動画には、屋外に並べられた無数の黄色い乗り物が映っている。その一部は植物に覆われており、長い間放置されているようだ。
中国のシェア自転車
これと類似の動画(日本で拡散された動画より縦長で画質が高く、数秒長い)は、アメリカのファクトチェックメディア「Snopes」によって2022年11月に検証されている。
Snopesが確認した限りで、この動画の最も古い投稿は2022年11月8日にTikTokで行われている。正確な撮影場所は特定できないが、車体に見られるロゴの形(動画は左右が反転されている)などから、中国のIT大手・美団(Meituan)が提供していた電動シェア自転車だとSnopesは特定している。
中国の「電動自転車」には、ペダルを回さずに走行でき実質的に電動スクーターと変わらないようなものもあって(参照)、実際の走行の様子(例)などを見る限り、美団の「電動シェア自転車」もこのようなタイプであるようだ。したがって、この乗り物を「電動スクーター」とする検証対象ツイートの記述は必ずしも間違いとは言い切れない。(※2023年4月15日修正しました。詳細はこちら)
これらが放棄された理由がバッテリーの交換費用のためというのが事実なのか、詳しく見てみよう。
過剰供給が背景
中国では近年、美団を含む複数の企業が国内各地に大量のシェア自転車を放棄し、問題になっている。その様子は日本でもBusiness Insider Japan、朝日新聞、FNN、ITmedia NEWS、AFP通信などが伝えている。
放棄の理由については、ブームに乗った過剰な供給に需要が追い付かなかったことや、大量の自転車の管理の仕組みが不十分だったことなどが挙げられていて、バッテリーの交換費用についての話は無い。
美団に関しても、2018年4月に摩拝単車(Mobike)を買収しシェアサイクル事業に参入したものの、多額の損失を招いたことにより、同年11月には早くも事業縮小を表明したと伝えられている。電動自転車の大量の放棄は、こうした事業上の失敗が主因であると考えられる。
使用しない電動自転車のバッテリーを交換する意味は無く、費用的に見合わないというのは事実だろうが、そもそも放棄の理由は別にありバッテリーの問題ではないことから、本ツイートは「不正確」であると判定する。
類似の拡散例
2021年には、今回検証対象としたツイートの内容を「電気自動車」に置き換えたような類似のツイートが拡散されており、InFactで筆者が検証している(「大船怜」は筆者の別名義)。合わせて参照されたい。
(大谷友也)