米・イスラエルがイランを攻撃
2026年2月28日、アメリカ軍とイスラエル軍がイランへの攻撃を開始。イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が死亡し、息子のモジタバ・ハメネイ師が跡を継いだ。米・イスラエル両軍の攻撃が続く一方、イランも報復攻撃やホルムズ海峡の事実上の封鎖を行うなど、双方の応酬が続いている(参照)。
本記事では前回に引き続き、この件に関する誤った情報や誤解を招く情報をピックアップし紹介する。
ハメネイ師の遺体?

ハメネイ師の遺体を写したものとして拡散された、覆面をして拘束された状態で横たわる人物の画像(上図右)。
掲示板サイトRedditでこれと一致する画像が少なくとも2019年9月には投稿されているため、ハメネイ師の死とは関係無い画像であることが分かる。画像の出所や撮影状況などは不明だが、Reddit投稿版の方が傍らに女性が立つなど写っている範囲が広く、全体的な解像度も高いため、よりオリジナルの画像に近いと思われる。
踊って祝う女性?

イランへの攻撃に対し、イラン人の女性が踊って「祝賀している」とする動画。
しかし、この動画は今回(2026年2月~)の攻撃より前の2025年12月にはFacebookやInstagramに投稿されていることが確認できる。
ブルカを脱ぎ捨てた女性?

観衆に囲まれた女性が頭に巻いた布とコートを脱ぎ捨て、ハメネイ師を罵る言葉が書かれたTシャツ姿になるという動画。
これは2026年1月、右派団体に所属するフランス人の活動家がパリで行ったパフォーマンスで、イランで起きたことではない。また、XやInstagramの投稿などを見る限り、この活動家は以前からブルカを着用しておらず、イスラム教徒であることをうかがわせる様子は無い。
爆撃の瞬間?

軍の司令部らしき部屋で爆発が起きるシーンが4つつなぎ合わされた動画。
同様の動画は2025年12月には既に海外で拡散され、複数のファクトチェック記事が公開されている。それによれば、4つのシーンのうち3つはAIで生成された動画とみられる。各シーンには、壁面に掲げられた中東らしき地図の地形が現実と異なる、人の指や机上の物体の形がおかしい、デジタル時計の表示がおかしい(ただし、この部分は上掲のX投稿動画では削除され映っていない)といった奇妙な点が複数指摘されている。
残る1つのシーンは、2025年11月にイラン国営メディアSNNが公開した映像が使われている。SNNによれば、これは2025年6月のいわゆる「12日間戦争」の際のイスラエル軍による攻撃で、イラン軍の施設が攻撃された瞬間の映像だとされている。
バーレーンのビルへの攻撃?

アメリカ軍指揮官が駐在するバーレーンの高層ビルへのイランのミサイル攻撃とされる動画。
しかし、道路上を走る2台の車が重なっているなどの不自然な描写から、これは生成AIで作られた動画と考えられる。
バーレーンの首都マナマでは、高層マンションがイランのドローン攻撃の被害を受けている(参照)が、拡散された動画はこれとは無関係だ。また、このマンションにアメリカ軍指揮官が駐在しているという情報は確認できない。
サウジ首都の空爆?

イラン軍によるサウジアラビア首都・リヤドへの攻撃とされる動画だが、手前に映る手の形がおかしいことなどから、AI生成動画の可能性が高い。
なお、遠景には世界最大の高層建築ブルジュ・ハリファに似た建物が見えるが、ブルジュ・ハリファがあるのはリヤドではなくアラブ首長国連邦(UAE)のドバイである。
「アッラーが守ってくれる」直後被弾?

アナウンサーがカメラに向かって何か喋っている最中に爆発音がして、アナウンサーが退避するという内容の動画。投稿者はこのアナウンサーが「どの爆弾も私たちには届かない。だってアッラーが私たちを守ってくれるから」と言っていたと主張している。
これは2025年6月、イラン国営のイラン・イスラム共和国放送(IRIB)が、傘下のニュースチャンネル(IRINN)の生放送中にイスラエルによって攻撃された時の映像であり、今回(2026年2月~)の攻撃とは関係が無い。また、AFP通信やTBSによれば、この時アナウンサーは放送局への攻撃を伝えながらイスラエルを非難する発言をしていたのであり、「アッラーが私たちを守ってくれる」といったことは言っていない。
イスラエルへの空爆?

イランによるイスラエルへの攻撃として拡散されたが、実際は全く無関係で、2024年8月にアルジェリアのサッカーファンが花火を打ち上げた時の動画である。2024年頃から繰り返し拡散されている。
後継者ら次々死亡?

イラン最高指導者のアリ・ハメネイ師が死亡したのに続き、その息子(どの息子を指すかは不明)や、後継となったイスラム法学者のアリレザ・アラフィ師、さらに後継者を決める聖職者88人による専門家会議の全員が、相次いで死亡したとFOXニュースが伝えたとする投稿。
しかし、アリ・ハメネイ師の息子、アラフィ師、専門家会議メンバーの死亡や、アラフィ師の最高指導者就任を、FOXニュースが報道した事実はいずれも確認できない。アリ・ハメネイ師が死亡した際の攻撃では孫などの親族も死亡したとされる(参照。妻は当初死亡と発表されていたがその後生存と修正)が、息子が死亡したという情報は無い。また、投稿の添付動画の1つは専門家会議への攻撃を伝えるものだが、会議メンバーは攻撃前に避難済みだったとされており(参照)、死亡したという報道はされていない。
この投稿(3月4日)の後、8日には、アリ・ハメネイ師の跡を継いで次男のモジタバ・ハメネイ師が最高指導者に就任したことが発表された。モジタバ・ハメネイ師は攻撃によって負傷したとされ、最高指導者に就任後も公の場に姿を現していない(参照1、2)。
段ボール製のモジタバ師パネル?

まとめサイト「Total News World」のXアカウントによる投稿。海外ユーザーの投稿動画を引用し、式典に出席できなかったモジタバ・ハメネイ師の代わりに段ボール製のパネルが使われたと述べている。
背景のアラビア語の文字の乱れなどから、イラン国営メディアSNNの動画を基にAIで加工した動画と考えられる。
(大谷友也)






