検証対象

警察署🇫🇷にロケットランチャー発射。何で市民がロケットランチャーを持ってるんだよ。戦争だろこれは。どう見ても傭兵派遣🇺🇸だ。
(※海外ユーザーの投稿動画を引用)

一般ユーザーのTwitter投稿(2023年7月3日、約3800RT)

判定

不正確

判定の基準について

動画はリヨンの郵便局ATMが爆発物により爆破された様子である。リヨンで警察官や警察署が襲撃される事件も実際におきているが、いずれもロケットランチャーは使われていない。

ファクトチェック

2023年6月27日、パリ郊外で17際の少年が交通検問中の警察官に銃で撃たれ死亡する事件が起きた。この事件を受けて警察への抗議活動が仏全土へ広がる中、一部が暴動に発展した(参考)。

検証対象の動画には、画面右側の建物の前で爆発が起きた後、10人ほどの人が建物に向かって駆け寄る様子が映っている。ロケット弾を発射する装置であるロケットランチャーのようなものが爆発前に打ち込まれているかどうかは、この動画からは確認できない。

これと同じ動画は他にも、「暴徒と化した市民が警察署にロケットランチャーをぶっ放しました」とする一般ユーザーによる7月3日のツイートが約2000RTされているほか、それを引用した政治学者の飯山陽氏による7月4日のツイートも約3800RTされるなど拡散した。

一般ユーザー(左)と飯山陽氏(右)のツイートのスクリーンショット

場所は郵便局

この動画は、現地時間7月1日未明頃に既にツイートされている(リンク1)。また、同じ場所と思われる爆発の動画もツイートされていて(リンク2)、それには「リヨンの郵便局が恐らく爆発物によって標的にされた(La poste à Lyon prise pour cible vraisemblablement à l’aide d’un engin explosif)」と書かれている。

これらを手掛かりに、「Lyon poste explosif(リヨン 郵便局 爆発)」といったワードで検索すると、7月2日付フランスのニュース専門放送局BFM TVのニュース映像を見付けることができる。「リヨン:メルモーズ地区で郵便局が爆発物で襲撃される(Lyon: un bureau de poste attaqué à l’explosif dans le quartier de Mermoz)」と題するこのニュースでは、検証対象と同じものを含めSNS上に投稿されている複数の動画が紹介され、建物で爆発が起きたり花火が打ち込まれたりする様子が報じられている。

Googleストリートビューでメルモーズ地区の郵便局付近の写真を見ると、動画に映る建物の様子が一致していることが分かる。

下図左のストリートビュー画像で、右端の丸い屋根と黄色いマークが見える建物が郵便局。その左の、人が立っている場所にはATMがある。隣接する矢印で示した建物は現在は取り壊されているようで(BFM TVの映像1:40~)、道路を挟んだ奥の建物がそれぞれの動画ではっきりと見える。

左:Googleストリートビューより、郵便局付近の様子(2022年2月)。右上:リンク1のスクリーンショット。右下:リンク2のスクリーンショット。いずれも枠と文字の加工は筆者

爆弾を使用か

地元リヨンの雑誌「Lyon Mag」の7月1日付の記事は、リヨンのメルモーズ郵便局のATMが爆発物で襲撃されたこと、爆発物を仕掛けた人物が目撃されたことを、翌朝の郵便局の様子とともに伝えている。

Twitterでは、爆発物を設置する犯人らと思われる、写真・動画共有アプリSnapchatからの転載らしき動画も複数投稿されている。

そのうちの1つの動画は、郵便局の外に設置されたATM近くに防護服を着た2人の人物がいるところから始まる。ATMのあたりから火花が出る中で2人は走って離れると、爆発が起こる。その後場面が切り替わり、カセットボンベのような筒状の物体を3つ巻き付けたものを手に持つ防護服の人物が映る。爆発の直前には「Bombes(爆弾)」という言葉も聞こえる。

別の動画には、既に損傷しているATMで、防護服の人物が同じような筒状のものに火をつけている様子が映っている。

Twitterに投稿された動画

フランスでは近年、現金を盗む目的でATMが爆破される事件がたびたびあり、ガスボンベや爆発性の混合ガスが使われたケースが報じられている。

警察署には花火

一方で、6月29日から30日には、リヨン市内で警察官がショットガンによる銃撃で負傷したり、複数の警察署が花火や火炎瓶などで襲撃されたりといった事件が報じられている。なお、報道では襲撃に「迫撃砲(tirs de mortiers)」が使われたとされていることがあるが、フランスメディアでは暴動の際に使われる花火のことを花火迫撃砲などと表現することが慣例となっている(参考12)。

以上のように、検証対象の動画で爆破されたのは警察署ではなく郵便局ATMであり、また爆発はロケットランチャーによるものではない。リヨンで警察署が襲撃された事実はあるため「不正確」と判定する。

(高倉佳子、大谷友也)

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