検証対象

なんと!午後の下総中山駅でいつもスウェーデンで日本人の奥様と『赤坂ニュース』を見ているという方に出会いました😳 及川さんが好きなんですって。 スウェーデンは刑務所の98%が移民だそうです。国が壊れてる… 日本を守ってほしいから参政党に頑張ってほしいとおっしゃっていただきました。
(※画像付き投稿)

工藤聖子氏(衆議院議員候補者)のX投稿(2026年1月25日、約2500リポスト。下線強調は筆者による)

判定

根拠不十分

判定の基準について

スウェーデンの刑務所収容者における移民の割合を示す公式なデータは確認できないが、関連するデータとの乖離が大きいため、「98%」とは考えづらい。

ファクトチェック

検証対象は、衆議院議員選挙(2026年2月8日投開票)に出馬する工藤聖子候補(参政党公認、千葉4区・比例南関東ブロック)が、公示前の1月25日にXで行った投稿である。工藤氏は、スウェーデンに住み日本人の妻を持つ人物と選挙区内で出会って聞いた話として、「スウェーデンは刑務所の98%が移民だそうです」と述べている。

さらに、参政党千葉県支部連合会(県連)の公式アカウントはこの投稿を引用し、「スウェーデン、刑務所に収監されている囚人のうち、98%が移民だそうです」と記している。県連のこの投稿は現在は削除されている。

投稿は信憑性無し

しかし、これらの投稿内容は信憑性に乏しい。スウェーデンの刑務所に現在収容されている人のうち移民の割合がどのくらいかを直接示す公式データは確認できないうえ、それに傾向が近いと思われる数値はいずれも「98%」よりずっと少ないからだ。

スウェーデン司法当局の公式データから確認できるのは以下のような事実だ。いずれも収容者の中の移民の割合そのものを表す数値ではないが、ある程度の傾向は共通すると考えられるため、参考として挙げる。

  • ①新規の収容者のうち、スウェーデン国籍を持たない人は24%(2024年)
  • ②既存の収容者のうち、スウェーデン国籍を持たない人は21%(2024年10月1日)
  • ③犯罪容疑者のうち、国外生まれの人は32.9%(2015~2018年)

以下、各データの詳細について説明する。

データ①:新規収容者でスウェーデン国籍を持たないのは24%

スウェーデン法務省管轄の政府機関である犯罪防止国家協議会(通称Brå)のウェブサイトには、最新の2024年のデータなどを基に、以下のように書かれている。

Av de som påbörjade en fängelseverkställighet under 2024 hade totalt 76 procent svenskt medborgarskap, medan 24 procent saknade svenskt medborgarskap. Andelen som saknade svenskt medborgarskap var högre bland männen (25 %) än bland kvinnorna (11 %). Fördelningen mellan personer med svenskt respektive utan svenskt medborgarskap var ett år tidigare 74 respektive 26 procent. Tio år tidigare, 2015 var fördelningen 64 procent med svenskt medborgarskap och 36 procent som saknade svenskt medborgarskap.
(※機械翻訳を基に筆者訳:2024年に刑期を開始した者のうち、スウェーデン国籍を持つ者は76%、スウェーデン国籍を持たない者は24%だった。スウェーデン国籍を持たない者の割合は、男性(25%)の方が女性(11%)よりも高かった。スウェーデン国籍を持つ者と持たない者の割合は、1年前はそれぞれ74%と26%だった。10年前の2015年には、スウェーデン国籍を持つ者が64%、スウェーデン国籍を持たない者が36%だった。)

Bråウェブサイト「Kriminalvård」より。下線強調は筆者による

つまり、2024年にスウェーデンの刑務所に新たに収容された人のうち、スウェーデン国籍を持たない人は24%である。後述のように、スウェーデン国籍を持たないことと移民であることは必ずしも一致しないためあくまで参考だが、この割合は検証対象の投稿で主張されている「98%」より大幅に少ない。

Bråのより詳細な資料では、上記の内容に加え、近年の推移についても述べられている(p.16~17)。それによれば、新たに刑期を開始した人のうち、スウェーデン国籍を持たない人の数は2018~2021年にかけて減少し、その後は横這いである(下図点線)。一方、スウェーデン国籍を持つ人は、数・割合ともに2018年以降ほぼ毎年増加している(下図実線)。

国籍・性別別の刑期開始人数の推移。Brå・法務統計ユニット作成資料「Kriminalvård: Fängelse och häkte 2024」p.17より

グラフの線は上から、スウェーデン国籍を持つ男性(薄い実線)、スウェーデン国籍を持たない男性(薄い実線)、スウェーデン国籍を持つ女性(濃い実線)、スウェーデン国籍を持たない女性(濃い実線)を表している。

データ②:既存収容者でスウェーデン国籍を持たないのは21%

また、同じ資料には次のようにも書かれている。

Av de totalt 8 206 personer som hade en pågående fängelseverkställighet den 1 oktober 2024 saknade 21 procent svenskt medborgarskap och 79 procent hade svenskt medborgarskap. Jämfört med 2023 har antalet personer med svenskt medborgarskap ökat med 1 065 personer, eller 20 procent. Antalet personer utan svenskt medborgarskap har ökat med 156 personer eller 10 procent.
(※機械翻訳を基に筆者訳:2024年10月1日時点で懲役刑に服していた8,206人のうち、21%はスウェーデン国籍を持っておらず、79%はスウェーデン国籍を持っていた。2023年と比較すると、スウェーデン国籍を持つ者の数は1,065人(20%)増加した。スウェーデン国籍を持たない者の数は156人(10%)増加した。)

同資料p.17より。下線強調は筆者による

つまり、2024年10月1日時点で刑務所に収容されている人のうち、スウェーデン国籍を持たない人は21%である。これも厳密には移民の割合と異なるものの、「98%」には程遠い。

「移民」のデータは無し

スウェーデン国籍を持たないことと移民であることは、必ずしも一致するわけではない。

例えば、国外で生まれてスウェーデンに移住し、その後帰化した人は、現在スウェーデン国籍を持っていても「移民」とみなし得る。また、スウェーデンは国籍に血統主義を採用しているため、外国籍の両親から生まれた子供はスウェーデン国内で生まれていても外国籍になる(参照)。この場合、本人は国外から移住してきたわけではないので、通常の「移民」の定義には当てはまらない。加えて、スウェーデンでは二重国籍が認められているため、スウェーデン国籍を持たないことと外国籍を持つことも必ずしも同じでない(参照)。

国外で生まれて移住してきた、いわゆる「移民」の収容者の割合を直接表す公式のデータは確認できなかった。

データ③:犯罪容疑者で国外生まれは32.9%

やや古いデータだが、Bråの2021年の資料概要)には、2015~2018年に犯罪の容疑者となった人の出身に関する統計がある。容疑者は裁判が行われる前の人であり、刑が執行されて刑務所にいる収容者とは異なるものの、おおよその傾向は共通と考えられる。

これによれば、スウェーデンに住民登録があるこの期間の犯罪容疑者のうち、51.39%が両親ともにスウェーデン国内生まれで本人も国内生まれ、8.26%が両親の一方が国内生まれで本人は国内生まれ、7.44%が両親ともに国外生まれで本人は国内生まれ、32.9%が本人が国外生まれである(資料p.47)。

「移民」に相当する国外生まれの人の割合は、「98%」を大幅に下回っていることが分かる。

取材に回答無し

リトマスでは、参政党千葉県連に対し投稿内容の根拠などを尋ねるメール取材を行ったが、設定した期限までに回答は得られなかった。

工藤氏や参政党千葉県連が述べたような、現在刑務所に収容されている人のうち「移民」の割合を直接表す公式のデータは確認できない。しかしながら、「新規収容者のうちスウェーデン国籍を持たない人は24%(2024年)」「既存の収容者のうちスウェーデン国籍を持たない人は21%(2024年)」「犯罪容疑者のうち国外生まれは32.9%(2015~2018年)」といった周辺情報と比べると、「収容者のうち移民は98%」は乖離が大きく、信憑性が低い。したがって、検証対象の投稿は「根拠不十分」と判定する。

なお、工藤氏の投稿に対しては日本ファクトチェックセンター(JFC)もファクトチェックを行い、誤りと判定している。また、AFP通信スウェーデン語版では2024年2月、収容者の88.3%が外国出身で45%がスウェーデン国籍を持たないとする類似の主張を検証し、当時最新の2022年のデータなどを元に誤りと指摘している。

(大谷友也)

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