ファクトチェック
2026年1月3日、アメリカはベネズエラに軍事攻撃を行い、同国のニコラス・マドゥロ大統領を拘束した。本記事では前回に引き続きこの件に関する誤った情報や誤解を招く情報をピックアップすると同時に、関連情報を紹介する。
(※2026年1月20日追記:Vol.3を作成しました。)
ファクトチェック記事紹介
日本ではこれまでにリトマスの記事のほか、NHKや日本ファクトチェックセンター(JFC)がマドゥロ氏拘束に関するファクトチェックをまとめている。
前回の記事でも述べたように、拡散されている誤情報・要注意情報には、「マドゥロ氏の拘束にベネズエラの市民が歓喜している」という内容のものが特に多い。ベネズエラ国外では各地で喜ぶ群衆の姿が見られ(参照)、国内でも一定数が拘束を支持しているのは事実だ。しかし、国内での反応は当局による抑圧もあって比較的小さく、大勢の市民が集まって歓喜するような様子は伝えられていない(参照1、2)。
トランプ氏、マスク氏、ホワイトハウス公式も…
影響力のある人物や政府が誤解を招く情報を広めている例もある。アメリカのドナルド・トランプ大統領は、自身が設立したSNSであるTruth Socialで、前回記事で取り上げた「歓喜する群衆」の動画(実際には2024年7月のベネズエラ大統領選に関連する古い動画)を投稿した。
さらに、実業家でXのオーナーであるイーロン・マスク氏は、同じく前回記事で取り上げた、AI生成と思われる「泣き崩れる女性」の動画をリポスト(参照)。アメリカ政府・ホワイトハウスの公式アカウントも、AI生成と思われるマドゥロ氏の画像をリポストしている(後述「拘束されたマドゥロ氏?②」参照)。
拘束されたマドゥロ氏?①

マドゥロ氏の拘束時の様子として、AI生成と思われる画像が複数拡散されている。この血で汚れた服を着たマドゥロ氏の画像もその一つだ。
この画像には、マドゥロ氏の左腕を掴む手の親指が異様に長い、トランプ氏が公開したマドゥロ氏拘束時の写真と服装が異なるなど、複数の不自然な点がある。その他にも下記のファクトチェック記事では、下着の白いシャツが全く汚れていないこと、額の深いしわが実際のマドゥロ氏には無いことなどをAI生成が疑われる理由として挙げている。
拘束されたマドゥロ氏?②

飛行機を背景に「DEA」(アメリカ薬物取締局)と書かれた服を着た人物らに腕を掴まれているマドゥロ氏のこの画像も、AI生成と考えられる。GoogleのAI画像ジェネレーターで生成されたことを示すメタデータ「SynthID」が含まれていること、マドゥロ氏や周囲の人物の服装が実際のアメリカ到着時と違うことなどが、ファクトチェック記事では指摘されている。
France 24やSnopesによれば、この画像はホワイトハウスの公式アカウントがリポストした投稿にも含まれていた。
また、日本では韓国紙中央日報の日本語版や、アゴラなどにも掲載された。リトマスでは両メディアに画像掲載の経緯等をメールで質問しているが、本校執筆現在回答は得られていない。
拘束されたマドゥロ氏?③

静岡大学教授の楊海英(大野旭)氏が海外ユーザーの投稿を引用して投稿。
この画像はAIを使ったものかは不明だが、ウクライナで拘束され後にロシアと捕虜交換された親ロシア派政治家の写真に、マドゥロ氏の顔を合成して作られたものである。
米軍の急襲?

元東京都知事で国際政治学者の舛添要一氏が引用し投稿。
実際には2025年6月にアメリカで行われた軍の訓練の映像である。
歓迎される米軍?

ベネズエラ国旗を振る人たちの前を軍用車両が通過する動画。投稿日はマドゥロ氏拘束の翌日であり、関連動画との誤解を招いているが、実際には1年程前の動画である。
この動画は2025年1月に既に投稿されており、アメリカ・フロリダ州のタンパで行われた、ベネズエラの自由を求めるデモの様子とされている。この日タンパでは、野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏によってマドゥロ政権に対する抗議デモが呼びかけられていた(参照)。
花火で祝う人々?

Threadsで拡散された動画だが、男性が動画を撮影しているスマホの画面と建物の形や花火の動きが一致していない、群衆が振る旗が異様に大きいなどの不自然な点があり、AI生成の可能性がある。

ファクトチェックでも、ツールによる分析の結果などからAI生成の可能性が高いと指摘されている。
公式声明をWord 2007で作成?

マドゥロ氏拘束に抗議するベネズエラの公式声明が、2017年10月にサポート終了したMicrosoft Office Word 2007で作成されているという投稿が拡散(削除済み)。
しかし、画像に写るUIやタイトルバーの表示などを見ると、使われているソフトはWord 2007ではなく、2024年10月にWindowsから削除された機能「ワードパッド」のようだ。

表示されている文面はベネズエラ大統領府や与党・統一社会党(PSUV)が公開したものと同じだが、この声明文をワードパッド上に表示したのがベネズエラ政府等か、それを報じたメディアなのかは定かではない。
(大谷友也)






