米・イスラエルがイランを攻撃
2026年2月28日、米軍とイスラエル軍がイランへの攻撃を開始。イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が死亡した。イランはイスラエルのほか、アメリカ軍が駐留する中東諸国などに対し報復攻撃を行い、戦闘が継続している(参照)。
この件に関する誤った情報や誤解を招く情報のうち、日本で特に拡散された10件をピックアップし紹介する。
爆撃の映像?

危機管理コンサルタントの丸谷元人氏が、海外ユーザーの投稿動画を引用して投稿。
これは実際には2025年6月のイスラエル軍によるイランの首都テヘランへの攻撃とされる動画で、今回の攻撃ではない。丸谷氏はこの動画を今回の攻撃と明言しているわけではなく投稿意図は不明だが、誤解を招く内容となっている。
小泉氏が攻撃に支持表明?

元TBS番組ディレクターの工藤剛史氏による投稿で、多くの著名人や政治家らが引用し拡散した。
これは小泉進次郎防衛大臣の3月1日の会見で、記者からアメリカの軍事行動を支持するか聞かれた小泉氏は、「国際的な核不拡散体制の維持のためにも、イランによる核兵器開発は決して許されません。この立場は、先程官房長官など、会見があった通りです」「今、官房長官、そして外務大臣からもお話があった通りだと思いますので、政府全体としてはそういう立場です」と回答している(動画2:16~)。
つまり、小泉氏は木原稔官房長官や茂木敏充外務大臣が会見で述べた立場を踏襲している。木原氏、茂木氏ともに、小泉氏に先立つ同日の会見で、イランによる核兵器開発を許されないと批判しつつも、アメリカやイスラエルによる攻撃に直接の評価は下していない。
翌2日には、高市早苗首相の国会答弁で、政府として攻撃への評価を差し控える立場が示されている(参照)。
- 拡散した著名人や公職者・元公職者など(敬称略、順不同):江川紹子(ジャーナリスト)、町山智浩(映画評論家)1・2、選挙ウォッチャーちだい(石渡智大)(著述家)、武田砂鉄(ライター)、安田純平(ジャーナリスト)、堀茂樹(仏文学者)1・2、毬谷友子(俳優)、桑原裕子(俳優)、うじきつよし(ミュージシャン)、金剛地武志(ミュージシャン)、ピーター・バラカン(ブロードキャスター)、西崎ゴウシ(音楽家)、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(劇作家)、深谷かほる(漫画家)、西位輝実(アニメーター)、福山和人(弁護士)、碧月はる(ライター)、西原孝至(映画監督)、森裕子(参院議員・立憲)、宮本徹(元衆院議員)、初鹿明博(元衆院議員)、斉藤真里子(東京都議・共産)、漢人明子(東京都議・無所属)、原田ひろみ(東京都清瀬市議・共産)、椛澤洋平(千葉市議・共産)、山田紗保(大阪府豊中市議・れいわ)、辻本達也(兵庫県明石市議・共産)、川畑善智(東京都中央区議・れいわ)、井佐哲郎(東京都中野区議・共産)、柳沢聡(東京都品川区議・れいわ)
歓喜に沸くロンドン?

詳細は特定できなかったが、2025年6月には既に掲示板サイトRedditで同じ動画が投稿されており、少なくとも今回の攻撃に対する反応ではない。この時期、ロンドンではアメリカやイスラエルによるイランへの攻撃に対する賛否双方の側のデモが行われていた(参照)。
ミサイルをかわす米軍機?①

アメリカ軍のものとされる戦闘機が、フレア(おとり用の火炎弾)を発射しながらミサイルをかわす動画。
この動画のオリジナルは2月28日にInstagramに投稿されていて、投稿者のプロフィールには、投稿動画は全てフライトシミュレーター(航空機の動きをCG映像で再現したゲーム)による架空の光景であることが明記されている。また、YouTubeにも同一人物によるとみられる投稿があるが、こちらも概要欄などでフライトシミュレーターの映像であることが説明されている。
ミサイルをかわす米軍機?②

同様に、「イランのミサイルをかわす米軍パイロット」として拡散された動画。
こちらも1月に①と同じInstagramアカウントが投稿した動画で、フライトシミュレーターの映像であることが分かる。「こんなプロのアメリカ人パイロットと競争できると思う???(به نظرتون حریف این خلبان حرفه ای آمریکا میشن؟؟؟)」というアラビア語の字幕は後から追加されたようだ。
ドバイのCIA施設に攻撃?

イラン国営のイラン・イスラム共和国放送(IRIB)が運営するニュースサイト・ParsTodayの日本版公式アカウントによる投稿。アラブ首長国連邦(UAE)の最大都市ドバイで、アメリカ中央情報局(CIA)の施設が攻撃されたとして、炎上する高層ビルを映した動画を添付している。
しかし、これは実際は2015年10月、UAEの都市シャルジャで発生した高層マンションの火災である。また、火災の原因は不明だが、ミサイルなどの攻撃によるものとの報道は見当たらない。
学校爆撃はイランの誤射?

イラン当局は、アメリカとイスラエルの攻撃により南部の小学校で子供を含む148人が死亡したと主張している(参照)。これについて、イランの革命防衛隊による誤爆が原因だったとイラン側が認めたとするTelegramの投稿のスクリーンショット画像が拡散。漫画家の倉田真由美氏、コラムニストのヴィズマーラ恵子氏、参院議員(日本保守党)の北村晴男氏らも同様の主張を引用するなどして投稿している。
しかし、現在までにイランの政権や革命防衛隊から誤爆を認める発表があったという事実は無く、イラン側はこの攻撃に関してアメリカやイスラエルを非難する立場を変えていない。引用されているTelegramアカウントもイランの政権批判を続けている人物のものであり、公式な情報ではない。
イスラエルがパニック?

これは正しくは2025年4月、イスラエルのテルアビブで行われた追悼記念日の式典で、会場スタッフを不審者と誤認する騒ぎが起きた時の映像だ。過去にも「フーシ派のミサイル攻撃から逃げる人々」として拡散され、Misbarがファクトチェックしている。
ネタニヤフ氏がドイツに逃亡?

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が密かに出国しドイツに逃亡しているとする投稿。元々は航空機追跡サイトのデータを根拠としたもので、イスラエルの政府専用機がドイツの首都ベルリンの空港に着陸していたことから生まれた主張である。
しかし、その後もネタニヤフ氏はイスラエル国内で会議に出席したり視察を行ったりする様子が伝えられている(例)。上記投稿の動画も、3月1日にネタニヤフ氏がメッセージを発した際のもので、場所はテルアビブ中心部の国防省などがある地域・キリヤとされている。政府専用機がドイツに行っていたのは、安全上の理由で一時的に移動していた可能性がある。
ネタニヤフ氏がミサイル攻撃で死亡?

経済アナリストの藤原直哉氏の投稿。ネタニヤフ氏とイスラエル軍のエヤル・ザミール軍参謀総長がミサイル攻撃で死亡したとロイター通信が報じたとする内容で、藤原氏が引用した海外ユーザーの投稿にはアルジャジーラの速報風の画像(上掲)も添付されている。
しかし、ロイター通信でもアルジャジーラでもそのような報道は実際には行われておらず、画像は捏造と考えられる。上述のようにネタニヤフ氏は引き続き国内で活動しており、ザミール氏の動向も変わらず伝えられている(例)。
(大谷友也)






