検証対象

強姦した男の金玉を取って去勢 男性ホルモン無くなる 韓国で法案可決

まとめサイト「Tweeter Breaking News-ツイッ速!」タイトル(2023年8月9日)

判定

誤り

判定の基準について

韓国において、強姦犯の精巣を取る外科的去勢の法案が可決した事実はない。薬物治療による化学的去勢を施す法律は、2011年から施行されている。

ファクトチェック

2023年8月9日、まとめサイト「Tweeter Breaking News-ツイッ速!」(以下ツイッ速)は、電子掲示板サイト「5ちゃんねる」(以下5ch)のスレッドを基に「強姦した男の金玉を取って去勢 男性ホルモン無くなる 韓国で法案可決」というタイトルの記事を公開した。ツイッ速のX(旧Twitter)アカウントによるこの記事のポスト(投稿)は約9600リポスト(再投稿)され、広く拡散されている。

また、ツイッ速は同じタイトルの記事を2021年6月と2022年3月にも公開していて、それぞれXで約1000回リポストされている(12。記事自体はともにリンク切れ)。

ツイッ速のXアカウントによる同タイトルの記事の投稿

同じくまとめサイトの「News Everyday」も、同様の5chスレッド(12)を基に、2023年8月11日同27日の2度別々の記事を公開。それぞれの記事のXポストは11日は約500回、27日は約4500回リポストされている。

薬物治療による去勢

いずれのまとめ記事も別々の5chスレッドを基にしているが、これらのスレッドで引用されているのは、「強姦未遂犯に対しても『化学的去勢』を可能に 韓国で法案が成立」という2017年12月の同じライブドアニュース記事である。ライブドアニュースの仕様として、一定期間が経過した記事の本文や配信元情報などは削除されるため(参照)、現在確認できるのは記事のタイトルと概要のみだ。

ライブドアニュース記事と同日付の朝鮮日報記事には、次のように書かれている。

韓国国会は1日、強姦未遂犯に対しても「化学的去勢」を可能とする「性暴力犯罪者の性衝動薬物治療に関する法律」の一部改正案を含む69の法案を成立させた。
 この改正案は「性衝動薬物治療」の対象となる犯罪に、これまで薬物治療の対象とされてこなかった強盗・強姦未遂や児童・青少年強姦罪などを新たに加えるというもの。
(※後略)

朝鮮日報「強姦未遂犯も化学的去勢の対象に=韓国国会」(2017年12月2日)より

化学的去勢とは、薬物投与により男性ホルモン(テストステロン)を抑える治療のこと。性犯罪者の再犯防止に効果があるとされ、物理的去勢とは異なり治療を中止すれば基本的に性欲は元に戻る。海外の一部で法制化されているが、倫理面から議論も多い(参照)。また、同一の行為を再び処罰する二重処罰や、副作用の問題も指摘されている(参照)。

精巣などの性器を直接切除するような外科的処置ではないため、「金玉を取る」とするまとめサイトや5chスレッドのタイトルは正しくない。

法律の内容は?

性犯罪者に化学的去勢を行うことを認める「性暴力犯罪者の性衝動薬物治療に関する法律」は、2010年6月に韓国の国会で可決し、翌2011年7月に施行された。法律では、強姦などの特定の性暴力犯罪を犯した者のうち、自らの行為を制御できない「性倒錯症患者」と診断され、かつ再犯の危険性があると認定された19歳以上の者に対し、薬物治療命令を請求できると定めている(参照)。

施行当初は被害者が16歳未満であるという条件があったが、2012年の法改正でこの条件は無くなっている。また、2017年には、対象となる犯罪に強盗強姦(強盗先での強姦)の未遂罪などが追加された。上述のライブドアニュース及び朝鮮日報の記事はこの2017年の改正時のもので、紛らわしい書き方がされているが、強盗ではない強姦の未遂罪は改正前から元々この法律の対象である。

化学的去勢の執行時には、並行して心理療法プログラムを履修させるほか、定期的なホルモン値の測定も義務付けられている。2022年の韓国の犯罪白書によると、2011年の施行から2021年にかけて87人に薬物治療を執行していて、治療期間中の再犯は無かったという(2022 범죄백서 p.444)。

外科的去勢は行われず

まとめサイトでは、2010年可決・2011年7月施行のこの法律を最近可決されたかのように取り上げ、化学的去勢ではなく物理的去勢が行われるかのようなタイトルの記事を繰り返し公開している。しかし、現在に至るまで韓国で性犯罪者に対する外科的去勢を行う法律が成立した事実は無いため、「誤り」と判定する。

(高倉佳子、大谷友也)

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