2026年1月3日、アメリカはベネズエラに軍事攻撃を行い、同国のニコラス・マドゥロ大統領を拘束した。この件に関する誤った情報や誤解を招く情報について、リトマスでは既に2回(Vol.12)にわたって特集してきたが、今回も引き続き同様の要注意情報等を紹介する。

法廷に連行されたマドゥロ氏妻?

マドゥロ氏と共に拘束された妻のシリア・フロレス氏とされる画像。画像の女性は左目の周りに大きなあざがあり、額には白いガーゼのようなものが貼られている。

俳優の毬谷友子氏はXにこの画像を投稿し、約2100リポストを獲得している。また、1月9日の小泉進次郎防衛大臣の記者会見では、この画像のことを指すのかは不明だが、東京新聞の記者がフロレス氏の法廷での「ひどく顔が腫れ上がった様子」について言及している(動画17:29~)。

報道によれば、フロレス氏は拘束時に肋骨付近に重傷を負ったと弁護士が主張しているほか、出廷時の法廷スケッチでは額や右目の周りに複数の絆創膏が貼られた様子が描かれている(参考123)。しかし、拡散された画像のような左目の周りのあざは見当たらず、また髪色や髪型、服装、眼鏡の有無などにも違いがある。移送途中のフロレス氏を捉えた写真でも、顔にあざは確認できず、髪色などは法廷スケッチと一致する。

こうしたことから、複数のファクトチェック機関がこの画像は生成AIによって作られたものと推測している。ただし、Snopesは画像の不自然さを指摘しつつも、AIによる生成または加工と断定はできないとしている。

1年で7カ国爆撃は初?

2025年、アメリカはベネズエラからの麻薬密輸に関与したとされる船への爆撃を洋上で繰り返した(参照)ほか、ベネズエラ沿岸の港湾施設に対する地上爆撃も行ったとされている(参照)。今回のマドゥロ氏拘束に際しても、首都カラカスで軍事施設等複数箇所への爆撃が行われている(参照)。

これに関連して、Xではドナルド・トランプ氏が1年で7カ国を爆撃した初のアメリカ大統領になったとする投稿が拡散された。

トランプ政権は2025年、ベネズエラを含む計7カ国に空爆を行っている(参照)。しかし、これはアメリカ大統領として「初」ではない。2016年、当時のバラク・オバマ大統領の政権も、シリアやイラクなど計7カ国を1年のうちに爆撃している(参照12)。

米軍機が30億ドルの金を持ち去った?

実業家・評論家の宋文洲氏が、ロシア国営メディア・RTからの情報として、海外ユーザーの投稿を引用する形で投稿

ロシアメディア等は、アメリカ軍がベネズエラの金準備30億ドルを押収するためにC-17輸送機を派遣したと主張しているが、これを裏付ける信頼できる情報は無い。マドゥロ氏拘束以降、C-17がベネズエラ周辺を飛行したという記録は無く、RTが示した動画も無関係なもの(オーストラリア・ブリスベンでの航空ショーのリハーサル)だった。

賄賂を受け取っていた米議員リスト?

マドゥロ政権等から数百万ドルの賄賂を受け取っていたアメリカの上院議員リストとされる画像。ベネズエラの元国家諜報局長で、麻薬密売容疑で逮捕されアメリカで裁判を受けているウゴ・カルバハル氏(参照)が「正式に公開」したものとされている。

2025年12月、カルバハル氏が書いたとされる、ベネズエラの国家的な麻薬犯罪を告発する文書が報道された。この中には、アメリカの外交官やCIA職員が賄賂を受け取っていたとする記述があるが、政治家への賄賂があったとは書かれていない。また、賄賂を受け取った具体的な個人名も明かされていない。

報道されていない範囲にこうした内容があった可能性は完全には否定できないが、少なくとも「正式に公開」はされておらず、拡散された「上院議員リスト」の信憑性を裏付ける根拠は何も無い状況だ。

ベネズエラ全土で歓喜?①

大勢の人が歓声を挙げたりベネズエラ国旗を振ったりする様子が映る動画。YouTuberのゆたぼん氏の投稿含め、動画がベネズエラで撮影されたかのような説明も見受けられるが、実際の撮影地はチリの首都サンティアゴだ。

サンティアゴを始め、世界各地の都市では実際にマドゥロ氏拘束を喜ぶ人々の様子が報じられている(参照12)。しかし、ベネズエラ国内では当局による抑圧もあり、大勢の市民が集まって歓喜するような光景は確認されていない(参照12)。

ベネズエラ全土で歓喜?②

こちらの画像も「ベネズエラ全土で大喜び」とベネズエラの光景であるかのように投稿されているが、これはアルゼンチンの首都ブエノスアイレスだ。

画像は元々はアルゼンチンの国会議員サブリナ・アフメチェト氏が投稿したもので、左下の女性がアフメチェト氏である(参照)。場所はブエノスアイレスのオベリスク前(Googleストリートビュー)で、マドゥロ氏拘束を祝う集会がここで行われたことは報道でも確認できる(フォトギャラリー4・5・8枚目)。

半裸の人々が祝う?

マドゥロ氏拘束を指揮したトランプ氏自身も、ベネズエラに関する誤解を招く投稿を行っている。

トランプ氏は、自身が設立したSNSであるTruth Socialにおいて、大勢の半裸の人々が屋外を移動する様子を映した動画を投稿した。動画には「ベネズエラは祝う 民主党員は泣く」という文が重ねられているが、実際にはこれは2025年12月にアメリカ・カリフォルニアの大学で行われた全く無関係のイベントを映したものだ。

Vol.2でも取り上げたように、トランプ氏は2024年7月のベネズエラ大統領選に関連する古い動画も投稿している。動画には「数百万のベネズエラ人がマドゥロ政権崩壊のニュースを祝っている」と書かれたXユーザーの投稿が重ねられているが、動画はマドゥロ氏拘束よりも前に撮られたものである。

(大谷友也)

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