検証対象

高市「もうすでに決定しています。」 戦争を継続する能力を高める財源確保のため 2027年1月から所得税が1% 上がります。 これ、皆さん知ってましたか? このままでいいのですか? 私は嫌です。
毬谷友子氏(俳優)のX投稿(2026年2月4日、約1.8万リポスト)
(※別のユーザーの投稿動画を引用)
判定

防衛費にあてられるのは基準所得税額の1%であり、所得税率が1%上がるわけではない。また、復興特別所得税の引き下げにより当面は負担額が相殺される。
ファクトチェック
検証対象のX投稿は俳優の毬谷友子氏によるもので、別のユーザーが投稿した高市早苗首相の会見動画を引用し、「戦争を継続する能力を高める財源確保のため2027年1月から所得税が1%上がります」などと述べている。
防衛費にあてるのは「基準所得税額」の1%
しかし、2027年1月から所得税が1%上がるというのは不正確だ。
この動画は、2025年12月23日に行われた高市氏の会見の映像の一部を切り抜いて作られている。会見で高市氏は、継戦能力などの防衛力を強化する財源として、2027年1月から「所得税に1%上乗せするということにした」と述べている(動画8:29頃~)。
だが、これによって単純に所得税が1%上がる、現在5~45%の所得税率が6~46%になるというわけではない。高市氏の発言はやや紛らわしいが、実際に防衛費にあてられるのは、所得税1%分よりもかなり少ない金額だ。
与党の自民党と日本維新の会が2025年12月19日に合意し、その後26日に閣議決定された2026年度の税制改正大綱によれば、防衛費にあてることを目的に2027年から新設される「防衛特別所得税」(仮称)の額は、「基準所得税額」の1%とある(与党合意p.136、閣議決定p.106)。
「基準所得税額」とは、所得税として徴収される金額(所得税額)から寄付や住宅ローンなどによる税額控除を引いたものを指す(参照:国税庁)。防衛費にあてられるのは、この「基準所得税額」の1%にあたる金額だ。
金融情報メディア「ファイナンシャルフィールド」の試算によれば、課税所得が500万円で税額控除が無い人の場合、防衛特別所得税の負担は所得税額57万2500円に1%をかけた5725円。もし所得税が1%上がれば負担は5万円増なので、それよりはかなり少ない額になる。
当面は復興税引き下げで相殺
また、この税制改正大綱では、防衛特別所得税の新設と同時に、東日本大震災からの復興費にあてる復興特別所得税の税率を2.1%から1.1%に引き下げることが決められている(与党合意p.136、閣議決定p.106)。
復興特別所得税は、防衛特別所得税と同じく基準所得税額に対し課されている。つまり、防衛特別所得税1%の新設は復興特別所得税1%の引き下げで相殺され、合計の負担額は変わらない仕組みだ。
高市氏の会見でも、「2027年1月から所得税には1%上乗せになるんですが、同時に復興特別所得税、これちょっと期間を長くして同率引き下げますので、足元で家計負担は増加しないようにしてまいります」と述べられている(動画8:53頃~)。この発言部分は、検証対象の投稿動画には含まれていない。
2038年以降は負担増に
ただし、2037年が期限とされていた復興特別所得税の課税は、税制改正によって2047年まで10年延長された。さらに、防衛特別所得税の課税は「当分の間」とされ、期限は未定だ。
したがって、防衛特別所得税が2048年以降も続くとした場合、復興特別所得税と合わせた負担額は、2037年まではこれまでと変わらないが、2038~2047年は基準所得税額の2.1%分、2048年以降は1%分、それぞれ改正前より増えることになる。
詳しくは、時事通信や東京新聞の記事で図と共に説明されている。
投稿は不正確
「2027年1月から所得税が1%上がります」とする検証対象の投稿は、長期的な税負担が増えるということでは事実と重なる面もある。しかし、所得税率そのものが1%上がるわけではないこと、当面は復興特別所得税との相殺で負担額が変わらないことを踏まえれば、全体として正確性に欠けているため、「不正確」と判定する。
著名人や候補者らが拡散
毬谷氏の投稿は、他にも多くの著名人や政治家、衆院選立候補者らによって引用投稿された。
著名人では、医師・ジャーナリストの森田洋之氏(約4900リポスト)、政治学者の岡野八代氏(約2300リポスト)、スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表の平尾剛氏(約800リポスト)、漫画原作者・評論家の大塚英志氏(約50リポスト)などが毬谷氏の投稿を引用している。
さらに、座間市議の星野久美子氏、春日部市議の木下三枝子氏、衆院選立候補者の梅村早江子氏(比例北関東ブロック)と白石ちよ氏(千葉2区)、宮城県委員会といった、いずれも日本共産党の政治家・立候補者・組織、そして公明党の福岡県議の井上寛氏なども引用投稿をしている。
いずれも毬谷氏の投稿を事実として扱っており、防衛費にあてられるのが「基準所得税額」の1%であることや、復興特別所得税の引き下げについて言及しているものは無い。
(大谷友也)






