検証対象

いいかい 国民の皆さん 中抜きシステムの 典型的例で有る🔥
一般ユーザーのX投稿(2025年2月4日、約1.4万リポスト)
(※画像付き投稿)
判定

「2520億」というのは2015年に新国立競技場の建設計画が見直される前の費用見積もりであり、その後新計画に基づき競技場は総工費1569億円で完成した。
ファクトチェック
検証対象の画像では、「五輪メーンスタジアム整備費」と題し、夏季オリンピック・パラリンピック6大会のメインスタジアムの総工費が比較されている。東京大会の総工費は2520億円と、2000年シドニー大会から2016年リオデジャネイロ大会までの5大会の総工費合計2480億円を上回るとされている。
東京オリンピック・パラリンピックは実際には新型コロナウイルス感染拡大の影響で2021年に延期されたが、この画像には当初の予定だった「(20)20年」という開催年が書かれている。
なお、本稿では投稿中の「中抜きシステムの典型的例」という主張については議論せず、画像中に記された総工費についてのみを検証する。
「2520億」は旧案の金額
この表は、元は2015年7月に日刊スポーツの記事に掲載されたもの(アーカイブ)である。「20年東京2520億」とあるのは、同年6月に東京オリンピック・パラリンピックの調整会議で下村博文文部科学大臣(当時)が報告した新国立競技場の総工費と一致する。
しかし、この「2520億」の建設計画はその後白紙撤回されたため、実際の総工費はこれとは異なっている。
2012年、8年後に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場として建設される新国立競技場のデザインコンペが行われ、11月には総工費1300億円の条件で建築家ザハ・ハディド氏が経営する建築設計事務所のデザイン(通称ザハ案)が採用された。しかし、総工費の見積もりが設計で1625億円(2013年12月)、2520億円(2015年6月)と次々に膨張し、批判が高まったことなどから、2015年7月に建設計画の白紙撤回が発表された(参照1、2)。その後再コンペが行われ、同年12月に隈研吾氏らのチームによる総工費約1490億円のデザインが採用された。新国立競技場は最終的に、2019年11月に総工費1569億円で完成した。
撤回に言及せず
以上のように、「2520億」は撤回された旧デザイン案に基づく総工費の見積もりであり、その後新しいデザイン案に基づき実際にかかった総工費は1569億円と、「5大会合計」の金額とされる2480億円よりもかなり少なくなっている。
「2520億」の建設計画は2015年当時実在したものであり、検証対象の投稿はかつてこのような計画が立てられたこと自体を批判する意図だった可能性も否定はできない。しかし、実際の総工費とかなりの差があることに触れていないのは、重要な情報が欠けていて誤解の余地が大きいため、「ミスリード」と判定する。
旧案の金額は度々拡散
検証対象の投稿と同じ画像は、当初のザハ案が白紙撤回された2015年以降にもX上で度々拡散されている。その中には数千リポストを獲得しているものも複数ある。

しかし、これらの投稿はこの計画が白紙撤回されたことを明記しておらず、同じく誤解を招くものだ。
(高倉佳子、大谷友也)