検証対象

志賀原発さん、突然海上に油19800リットルが漏れ始めてしまう…北陸電力「環境や人体への影響ない」

まとめサイト「NewsSharing」記事タイトル(2024年1月8日)

判定

ミスリード

判定の基準について

「19800リットル」は志賀原発2号機の主変圧器から漏れたと推定される油の総量で、その多くは既に回収されている。海上へ流出したと見られるのは、そのうち約6.1リットルである。

ファクトチェック

2024年1月1日に発生した能登半島地震では、石川県志賀町に位置する志賀原子力発電所でも設備の損傷などの被害が発生。外部電源の一部が使えなくなるなど影響があった(参照12)。

まとめサイト「NewsSharing」は8日の記事で、読売新聞の7日の記事(Yahoo!ニュース配信版)を引用しつつ、読売記事には無い「突然海上に油19800リットルが漏れ始めてしまう」という表現を加えている。NewsSharingの記事はXで約4200リポストを獲得した

油漏れ発表の経緯

志賀原発を運営する北陸電力は2日、1号機の起動変圧器と2号機の主変圧器で配管がそれぞれ損傷し、絶縁用の油が1号機で約3600リットル、2号機で約3500リットル漏れたという推定を発表。3日には2号機の励磁電源変圧器からも約100リットルの油漏れを確認したと発表した。この時点では北陸電力は、油は堰内に収まり、外部への影響は無いとしていた。

しかしその後5日、北陸電力は2号機の主変圧器から漏れて回収された油の量を約1万9800リットルと発表。漏れた油の量は、当初発表(約3500リットル)の約5.7倍に修正されたことになる。

7日には、2号機主変圧器周辺の側溝と道路にわずかな油膜が確認され、原発前面の海面上にも油膜が浮いていたと発表された読売記事はこの発表を受けたもので、海上に確認された油の量は0.1リットル程度とされている。さらに10日にも、同じく海面上に約6リットルの油膜を確認したことが発表されている

確認された油の量と発表日(筆者作成)

発表によれば、海面上の油膜に対してはいずれも既に中和剤などによる処理やオイルフェンスの設置が行われている。2号機の主変圧器から漏れた油の一部が流れ出したものと推定されているが、放射性物質は含まれていないという(参照)。

NewsSharingの「海上に油19800リットルが漏れ始めてしまう」という表現は、「19800リットル」の全てが流出したという意味ではないと思われるが、2号機の主変圧器から漏れて既に回収された油の総量と、回収しきれず海へ流出したと見られる量を混同させる記述である。

原発近辺の海上で油の流出が確認されたこと自体は事実だが、その量は合わせて約6.1リットルと、「19800リットル」とは大きく異なる。NewsSharingの記事は実際以上に大量の海上流出があったかのような印象を読み手に与えているため、「ミスリード」と判定する。

(大谷友也)

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