検証対象

9月2日午後5時「朝鮮人百十余名が寺島管内四ツ木橋附近に集まり、津波が来るぞと連呼しながら凶器を持って暴行を働き、放火をしているものがあった」との内容が、1925年警視庁発刊の大正大震火災誌に記載されてますよ。大震災直後に日本人を混乱させながら大暴れしてたんですね。

一般ユーザーのTwitter投稿(2022年8月5日、約1100RT)

判定

ミスリード

記載の内容はあくまで当時の「流言蜚語」の一例として示されたものである。

判定の基準について

ファクトチェック

『大正大震火災誌』は、1923年9月1日に発生した関東大震災について、警視庁が2年後の1925年にまとめ発行した震災の記録集である。投稿者は前後のツイートで、震災の際に起こった朝鮮人虐殺は朝鮮人側の暴動が実際にあったためだと主張。その根拠として、上記のツイートを投稿している。

『大正大震火災誌』を見てみると

『大正大震火災誌』は国立国会図書館デジタルコレクションにて閲覧することができる。原文を見てみると、その中に確かに投稿画像の内容を確認することができた。

「鮮人百十余名寺島署管内四ツ木橋附近ニ集リ、海嘯来ルト連呼シツヽ戎凶器ヲ揮ヒテ暴行ヲ為シ、或ハ放火ヲ敢テスルモノアリ」

国立国会図書館デジタルコレクション『大正大震火災誌』448ページ(コマ番号344)より。旧漢字は新字に改めた(以下同)

ただし、当該箇所の前後には以下のような記述も見つかった。

今本庁及ビ各署ニテ偵察聞知セル、流言蜚語ノ大要ヲ、日時ヲ遂フテ列挙スレバ左ノ如シ。

同書445ページ(コマ番号342)より

右ニ挙グル所ハ、流言中ニ於テ最モ人心ヲ刺戟シ伝播力ノ激尽ナリシモノナリ

同書451ページ(コマ番号345)より

一連の部分は、同書441ページ(コマ番号340)から始まる「第五章 治安保持 第一節 流言蜚語ノ取締」に含まれる内容であり、震災後の不安に駆られた民衆の間にさまざまな流言が広がり、秩序に混乱をきたした状況が記述されている。

検証対象のツイートにある文言も、「流言蜚語」の一例として「列挙」されたものの一つであり、事実として記録されたものではないことが読み取れる。

したがって、投稿者の主張する通り、検証対象の言説が「大正大震火災誌」に記載されていることは事実だが、その部分だけを切り取って事実とするのは原文の意図とは異なり、誤解を招くことに繋がるため、ミスリードであると判定した。

(鳥居大嗣、大谷友也)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事を読んでよかった、役に立ったと思われた方は、ぜひ「ナットク」やシェアボタン(右下)をクリックして、サポーターになっていただけると嬉しいです。
記事で気になるところがありましたら、こちらからコメントください。
新しいファクトチェック記事のお知らせメールを希望する方はこちらで登録できます。