検証対象
内閣情報調査室(内調)は元々20名程度の人員だったのが、安倍政権から200名を超える組織に肥大している。これは何を意味しているか?おそらくその実態は、映画「新聞記者」で描かれているものと大差ないだろう。つまり諜報機関。政権に不都合な人物を摘発するためのもの。民主主義とは相容れない。
一般ユーザーのTwitter投稿(2022年2月13日、約2500RT)
判定
投稿者は取材に対し回答せず、情報の具体的な根拠を示さなかった。内調の人員数については過去に国会質疑などで言及されているが、その真偽を客観的に確認することはできない。
ファクトチェック
内閣情報調査室(内調)は内閣官房の下に設置されている情報調査機関で、「内閣の重要政策に関する情報の収集及び分析その他の調査に関する事務」などを行うとされている(内閣官房組織令第4条)。
高度なインテリジェンス機関としての役割から、その具体的な組織や活動内容については公にされないことも多い。
取材には回答無し
情報検証JPでは、上掲のツイートを行った投稿者にTwitterのダイレクトメールを送り、情報の根拠などを尋ねる取材を行った。しかしながら、回答期限までに投稿者からの返答は無かった。
また、内調に対しても取材を行ったものの、こちらも期限内の回答を得られなかった。
今後、回答があった場合には追って本記事に記載する。
国会質疑に見る数字
内調の人員数を知るために、参考となる可能性のある情報はいくつかある。
一つは、国会の中で政府や官僚、野党議員らが述べた数字だ。以下に、国会質疑の場で言及された内調の人員数について主なものを発言者名とともに挙げる(内部組織の内閣衛星情報センターを除く。発言者肩書はいずれも当時のもの)。
- 1997年5月13日:百数十名(依田智治参議院議員)
- 2004年11月4日:165名(伊佐敷眞一内閣審議官)
- 2005年4月8日(4月1日時点の数):約170名(伊佐敷眞一内閣審議官)
- 2007年3月27日:約170名(伊佐敷眞一内閣審議官)
- 2007年10月25日:約180名(町村信孝官房長官)
- 2013年11月5日:約200名(菅義偉官房長官)
- 2015年2月5日:220名(松沢成文参議院議員)
- 2019年6月12日(1月1日時点の数):194名(森美樹夫内閣審議官)
太字にしたものが、それぞれ第一次・第二次の安倍政権期にあたる(参照)。
ツイート投稿者の言う「安倍政権」が第一次・第二次のどちらを指すのかは定かでないが、第二次とした場合、この頃から「200名を超える」ようになったというのは上記の数と整合する。一方、「20名程度」だった時期というのは見当たらない。
とはいえ、議員や官僚らが述べた人員数は客観的資料などによって裏付けられているわけではない。内調は機密性の高い組織であることから、正確な人員数を公開していない可能性も無いとは言えない。
その他の情報
ジャーナリストの今井良氏による2019年の著書では、その紹介文に「現在、約250人の内調スパイが安倍総理の手足となって、経済から軍事まで国内外のあらゆる情報を収集・分析し政策判断を支えている」と記されている。
民間の求人情報サイトに掲載されている2022年度版の情報では、「従業員数」が「約400名」とする記載がある。これは内閣衛星情報センターを含む数と考えられる。
しかしながら、これらも客観的に検証できる情報ではないため、真偽を判断することは難しい。
結論
「元々20名程度、安倍政権から200名以上」とする検証対象ツイートの内容は、国会質疑で語られた情報とは一部食い違いがある。しかし、諸々の証言などの内容が事実かどうか確かめる術が無い以上、どの情報が正しいのか判定する事はできない。投稿者も取材に対し情報の根拠を示さなかったため、本件は「根拠不十分」と判定する。
(大谷友也)