2023年8月1日、リトマスは「国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)」の審査に合格し、認証団体として加盟を果たしました(お知らせはこちら)。

IFCN加盟のためにはファクトチェックの国際綱領である「Code of Principles」への適合が求められ、その1つ1つの項目に照らし合わせた厳しい審査が行われます。

リトマスの審査の過程はIFCNのサイトで公開されていますが、長文な上ほとんどが英語のため、なかなか分かりづらいかもしれません。そのため、ここで具体的な審査内容や、審査員からリトマスへの講評など、要点を解説してお伝えします。

背景(Background)

日本のファクトチェックの現状などについて、審査員(耳塚佳代氏)がまとめています。

審査の結論(Assessment Conclusion)

審査員による審査結果の概要です。要点は次の「A short summary in native publishing language」の項に日本語でも書かれています。

リトマスは質の高いファクトチェックを提供し大半の基準に適合していると評価されましたが、①チェック対象を選ぶ際にリーチ(拡散度)とインパクト(影響度)をどのように考慮しているかについてと、②2次的なソースが頻繁に利用されていることについての2点において、さらなる説明が求められました。

リトマスはこの2点について追加の回答を提出し、再評価を受けています(詳細は後述)。①に関しては、審査員はリトマスの回答は十分であると評価しました。②に関しては、審査員はリトマスの回答を合理的としつつも、多くの2次ソースが使われていることは事実であり、読者への十分な説明が必要であるとしています。

総合的な結論として、審査員はリトマスがIFCNの基準に「適合している(Compliant)」としています。

審査員のこの結論を参考に、最終的にIFCNの理事会がリトマスの加盟を認めたということになります。

セクション1:認証団体としての資格(Eligibility to be a Signatory)

団体の組織形態や目的などの概要に加え、平均して週1回以上のファクトチェックを6ヶ月以上発表しているか、その内75%以上が公益性の高い題材であるか、国内外の政府や政治家などにコントロールされていないかなどが審査されます。

審査員からは、①リトマスが将来的に計画するファクトチェックに関する啓発活動の例として挙げた「意見記事」についての詳細、②「日本初のファクトチェック専門メディア」を自称しているの妥当性の2点に関して、更なる説明を求める意見がありました。

私たちはこれに対し、①ここで言う「意見記事」とはあくまでリトマスが考えるファクトチェックのあり方などに関わるものであり()、政治的な主義主張を表すものではないこと、②日本でファクトチェック記事を発表しているほとんどの媒体は一般的な報道メディアの一部門としてファクトチェックをおこなっていて専門ではないこと(JFCはファクトチェック専門だがその発足はリトマスより後)を説明しました。

セクション2:非党派性と公平性への取り組み(A Commitment to Non-partisanship and Fairness)

このセクションでは、誰の主張を検証するのでも同じ基準を用いているか、検証対象を特定の立場に不当に集中させないか、団体やメンバーが特定の政治的主張の支持や反対を表明していないかなど、公平性についての審査が行われます。

これらの点の参考として、「Criteria 2.1」の項では、リトマスから10本のファクトチェック記事を例示しています(添付のxlsファイル)。

「Criteria 2.2」では、チェック対象を選ぶ際にリーチ(拡散度)とインパクト(影響度)をどのように考慮しているかについて、審査員から更なる説明が求められました。そのため、私たちは当初の回答をより具体的なものに更新し、その主張のSNS等で広く拡散されていること、発信者が著名人や公人等の影響力の大きい人物であること、社会的関心が高い話題であること、公衆衛生や世論形成等の重大事に影響を与え得ることを検証対象の選定基準としていることを説明しました。

セクション3:情報源の基準と透明性への取り組み(A Commitment to Standards and Transparency of Sources)

セクション3では、検証に用いるソース(情報源)の適切さが審査されます。提示されたソースを読者が確認し検証の過程を追うことができるようにすること、可能な限り1次的なソースを利用することなどが求められます。

ここでは、2次的なソースが頻繁に利用されていることについて審査員の指摘があり、私たちは「Criteria 3.2」の回答を更新しています。それが入手可能な最良の情報源である時には2次ソースを利用することがあり、その際もあくまで補足的に用いるのであってファクトチェックの結論には影響を及ぼさないこと、使用したソースの内容に疑問がある場合はそのことを明示していることなどを説明しました。

セクション4:資金源と組織の透明性への取り組み(A Commitment to Transparency of Funding & Organization)

団体の資金源や所有関係、編集メンバーの経歴、団体の連絡先などをウェブサイト上に明記することが求められています。前会計年度の総収入の5%以上を占める資金源がある場合、それを公開する必要があります。リトマスでは、運営資金についてこちらのページで公開しています。

セクション5:検証方法の基準と透明性への取り組み(A Commitment to Standards and Transparency of Methodology)

検証の方法についてのセクションです。検証対象の選択から記事公開までのプロセスの説明、検証対象の選定基準、取材の方法、検証可能な主張と不可能な主張の区別などが審査されます。

「Criteria 5.2」では、審査員がランダムに選定した記事において、検証対象の選定基準について確認しています。リトマスは対象となる主張の拡散の度合いや重要性を重視していますが、審査員からはこのことをより明確に説明するようコメントがありました(上記セクション2参照)。

セクション6:オープンで誠実な訂正方針への取り組み(A Commitment to an Open & Honest Corrections Policy)

サイト上に問い合わせ窓口を設け、必要な場合は誠実に訂正を行うことなどが求められています。

リトマスの訂正ページはこちらにあります。申請を行った時点(2022年7月)においては、訂正が必要と判断した事項はありませんでした。

以上となります。IFCNの審査過程の様子が伝わりましたでしょうか。このような厳しい審査を通過しIFCN加盟を認められたことを記念して、リトマスではこの度「マンスリーサポーター募集キャンペーン」を始めました。

ファクトチェックは採算に結び付けるのがなかなか難しい地道な仕事ですが、国際基準に則したメディアとして、私たちは資金源にも高い公平性と透明性が要求されています。国家や政治団体から強い影響を受けることは認められず、その点で幅広い市民の皆様からの寄付は重要かつ理想的な資金源となっています。

ファクトチェック記事をなるべく多く出していくためには、運営のための資金が必要となります。皆様の温かいご支援をお待ちしております。