リトマスはファクトチェックの方針の中で、「公平・公正な検証のために」として以下のように記載しています(説明の便宜上番号を追加しています)。

① リトマスはあらゆる思想・信条に対して中立であり、いかなる政治的団体・主張に対しても組織として支持あるいは反対の表明をすることはありません。
② 編集に関わるメンバーはいかなる政治的団体にも直接関与せず、特定の政治的主張の影響を受けることはありません。
③ 検証対象とする情報には、主張内容に関わらず同じ選定基準・検証手法を用います。

これに対し、先日読者の方からご意見を頂きました。その内容は非常に詳細で理路整然としたものでしたが、以下に要点のみを挙げさせて頂きます。

・①について、「あらゆる思想・信条に対して中立」というのはそれ自体が一つの思想信条である。人は主観によって中立を自称することしかできず、あらゆるバイアスの影響を廃し客観的に中立になることは不可能である。

・②について、メンバーが特定の政治的団体に関与しないとしても、明確な形を持つ組織だけが政治的主張をするわけではない以上、主張の影響を受けないことの説明にならない。また、一切の影響を受けないというのは上に同じで不可能である。

リトマスのファクトチェック方針は、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)が定めるファクトチェックの国際要綱「Code of Principles」(概要)や、これを元に日本におけるファクトチェックの推進団体ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)が提唱した「ファクトチェック・ガイドライン」に則って作られています。

IFCN要綱の第一に掲げられているのが、「非党派性と公正性(Nonpartisanship and Fairness)」に関する原則です。この中には「ファクトチェックの対象とする問題に関し、特定の政策的立場の側に立ったり支持したりすることはしない」という規定があり、上記①~③の方針もこれに沿ったものになっています。

これにおいて、問われているのはあくまでファクトチェックを行う組織としての非党派性・公正性です。所属する個々人があらゆる思想信条から無縁であるというのはご指摘の通り不可能であり、IFCNの規定もそのような内心面を縛るものではないと理解しています。①に挙げる「中立」も、メンバーの個人的な思想はどうあれ、ファクトチェックを行う際には組織として不偏不党の姿勢を堅持するということを表明するものです。

①~③の方針全体は、この「中立」という理念を体現するためにリトマスが順守する具体的・客観的な規範となります。

②の「関与」と「影響」に関する方針についても、上と同じく、個人の内心を制約するわけではありません。ここでの影響とは金銭その他の利益の供与など具体的な形としての影響力を指し、こうした利益上のつながりをメンバーが持つことでファクトチェックの正当性が疑われるのを防ぐことを目的としています。

もちろん、こうした目に見える形のつながりであれ目に見えない内面の影響であれ、その有無にかかわらず、ファクトチェックが特定の誰かへの肩入れを目的として行われることはあってはなりません。③の「同じ選定基準・検証手法」の規定は、それを防ぐためのものです。

以上のような我々の意図は、方針ページに掲載した短い文章だけでは幾分説明不足だったかもしれないと考え、今回この場で改めて詳述させていただきました。

この度は読者の方から率直なご指摘をいただき誠に感謝しております。「みんなとつくるファクトチェック専門メディア」を掲げるリトマスでは、読者の皆様からの忌憚なきご意見やご要望を常に歓迎しています。お気づきの点は専用フォームにて是非お気軽にお送りください。

(大谷友也)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 この記事を読んでよかった、役に立ったと思われた方は、シェアボタン(右下)をクリックして、サポートしていただければ幸いです。 ご意見・ご感想はこちらからお送りください。