検証対象

米・疾病対策予防センター(CDC)のロシェル・ワレンスキー所長の発言について、「コロナ死亡者の75%はすでに他の4つの疾患と戦っていたのです」と説明する動画

動画共有サイトRumbleへの投稿(2022年1月18日、約2万3000回再生)

判定

誤り

判定の基準について

根拠とされたCDC所長の発言は、一部が切り取られたものだ。元のインタビュー動画では、新型コロナワクチンを接種した人を対象に行った研究の結果、「死亡例の75%以上が少なくとも4つのコモビディティ(*後述)を持っている人だった」と述べていた。

ファクトチェック

元動画は海外ニュースメディアの番組

この動画は2022年1月10日に放送された米ニュースメディア・News Maxの番組『Rob Schmitt Tonight』に日本語の字幕を入れるなどして編集したものだ。

この動画を添付したツイートが2022年1月18日に投稿され、約4400RTを獲得した(現在は削除済み)。

動画内では、CDC所長の「75%以上は少なくとも4つのコモビディティを持っている人のケースでした」という発言を流した後に、司会者のロブ・シュミット氏が「コロナの死亡の75%は、死をもたらす他の条件をすでに4つ持っている人に起きたものでした(75% of COVID deaths were in people who already had four other conditions that were fighting to kill them.)」と述べている(字幕上の日本語訳は「コロナ死亡者の75%はすでに他の4つの疾患と戦っていたのです」)。本当にそうした事実はあるのか。以下、詳しく見ていく。

(Rumbleより)

CDC所長の発言を一部切り取り

Twitterで拡散された動画に含まれているCDC所長のインタビュー映像は、2022年1月10日に放送された米ABCの番組『Good Morning America』の一部だ。

インタビューでのやり取りは以下の通り。

■インタビュアーの発言

(2:32~)

日本語訳:

今朝から私たちが話している励みになるニュースについてお聞きしたいと思います。この新しい研究は、重症化を防ぐためにワクチンがいかに効果的であるかを示しています。このことを踏まえると、どこにでも存在する可能性があるこのウイルスと、どのように共存していくかを考え直す時期に来ているのでしょうか?

原文:

I want to ask you about those encouraging headlines that we’re talking about this morning. This new study showing just how well vaccines are working to prevent severe illness. Given that, is it time to start rethinking how we’re living with this virus? That it’s potentially here to stay?

■CDC所長の発言

(2:46~)

日本語訳:

本当に重要な研究なので、要約させていただきます。12月から10月にかけてワクチン接種を受けた120万人を対象にした研究で、ワクチンの初回シリーズ(*訳注1)を接種した人の約0.015%が重症化、約0.003%が死亡したことが明らかになりました。死亡例のうち圧倒的に多く、つまり75%以上が、少なくとも4つのコモビディティ(*訳注2)を持っている人でした。つまり、もともと体調が悪かった人たちなのです。オミクロンの文脈では、実に心強いニュースです。

原文:

You know really important study if I may just summarize it. A study of 1.2 million people who were vaccinated between December and October and demonstrated that severe disease occurred in about 0.015% of the people who received their primary series and death in 0.003% of those people. The overwhelming number of deaths, over 75%, occurred in people who had at least four comorbidities. So really these are people who were unwell to begin with. And yes, really encouraging news in the context of Omicron.

*訳注1 primary series:ブースター接種を含まない、最初の一連の接種。通常2回の接種を指す。

*訳注2 comorbidity:日本語では「併存症」などと訳される。ここで言及されている元の研究ではrisk factorと書かれており、正確には疾患だけではなく年齢などの他のリスク要因も含む。

拡散された動画では「死亡例のうち圧倒的に多く、つまり75%以上が、少なくとも4つのコモビディティを持っている人でした。つまり、もともと体調が悪かった人たちなのです」という発言のみが切り取られていた。

番組内で取り上げられた切り取りの箇所とシュミット氏の説明だけを聞くと、所長がワクチン接種の有無にかかわらず死者全体の「75%以上が少なくとも4つの条件を持っている人」と述べているかのような印象を受ける。発表された死者数の大半は実は新型コロナと関係が無いというのがシュミット氏らの主張だ。

しかし、インタビュー内容から分かるように、所長はワクチン接種を受けた人を対象にした研究の結果として、死者の多くが4つ以上の条件を持つ人だったと述べていた。つまり、ワクチンを打っていれば元々リスク要因を持つ人以外は新型コロナによる死亡リスクがほぼ無くなるというのがその趣旨で、全体の死者数において新型コロナと無関係なものが大半だと言っているわけではない。

拡散された動画では、こうした要素が欠落しており、本来の趣旨とは異なるメッセージが伝わる形となっていた。従って、「コロナ死亡者の75%はすでに他の4つの疾患と戦っていた」という説明は誤りだと判定した。

複数の海外メディアが検証済み

同様の言説は英語圏でも拡散されており、ロイター通信CNNPolitiFactなどがファクトチェック記事を配信している。 

(鳥尾祐太、森青花)

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