お知らせにも書いたように、リトマスは先日モンゴルの「Mongolian Fact Checking Center(MFCC)」の検証に協力し、その内容を基にMFCCのファクトチェック記事が発表されました。

MFCCはモンゴルの代表的なファクトチェックメディアであり、現在同国で唯一国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)に加盟している団体です。

MFCCからの調査依頼があったのは、モンゴルのあるウェブサイトから拡散した「元横綱朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏が日本で拘束されている」とする情報です。拘束の理由は「いくつかの事件に関連」などとされているものの、詳しい事は書かれていません。

かつて大相撲の横綱として一時代を築き、引退後の現在は実業家として活動するダグワドルジ氏は、日本のみならず本国モンゴルでも高い知名度を誇ります。その彼が拘束されたとする情報はモンゴルのネット上で大きな関心を集めたようですが、皆さんご承知の通り、そのような事実はありませんでした。

MFCCからの連絡を受け調査を開始した我々にも、すぐにこの情報が誤りであることが分かりました。ダグワドルジ氏が拘束または逮捕されたというような報道は全くありませんし、日本では噂にもなっていない事が確かめられました。

また、彼のTwitterアカウントは「拘束」の情報が出回った2月1日以降も何事も無く更新され、自撮り写真を含むツイートや「いいね」が何度も行われています。

このような証拠を集め、リトマスはMFCCに報告しました。すぐに記事化され、MFCCはリトマスの調査にも言及しながらこの情報を「誤り」とする判定を下しました。

MFCCはFacebookと提携しているため、Facebookではこの情報を「虚偽」としてファクトチェック記事の存在を知らせる警告が表示されるようになっています()。調査によればモンゴルのFacebook普及率は人口の74.5%にも及ぶため、リトマスの調査から生まれたファクトチェック記事は誤情報の抑止に大いに貢献したと言えそうです。

このように、ファクトチェック団体同士は国を超え相互に協力しながら検証を行うこともあります。世界各国でそれぞれ独立してファクトチェック団体が育つことは、世界全体の情報空間の健全さを保つ役にも立つのです。リトマスではこれからも時に国際的な連携を取りながら、幅広いファクトチェック活動を行っていきます。

(大谷友也)

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