2024年6月26日から3日間、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボで行われたファクトチェックの国際会議「GlobalFact11」に、リトマスから安藤理事とアシスタントエディターの高倉が参加しました。

GlobalFactは毎年世界のファクトチェック関係者が集まり、業界全体の問題を話し合い、最新の情報を共有し協力し合うために開かれています。

今年は、フィリピンのネットメディア・ラップラーの共同設立者兼CEOで、2021年のノーベル平和賞受賞者であるマリア・レッサ氏の基調講演から始まりました。講演でレッサ氏は、ドゥテルテ前大統領政権下での弾圧と投獄の経験を話した上でファクトチェッカーに激励の言葉を述べたほか、テック企業とファクトチェッカーの関係は「フレネミー(フレンド+エネミー)」であるとして、ファクトチェック団体と連携して資金提供している​Meta、YouTube、TikTokに感謝すると同時に、誤情報の拡散を止め民主主義を守りジェノサイドを止めるためにテック企業は「何かができるはずだ」と促しました。講演の内容の概要はこちら、全文はこちらから読むことができます。

右:マリア・レッサ氏 左:AFP通信・フィル・チェットウィンド氏

MetaとTikTokが、それぞれ事前に集められた質問に答えるセッションもありました。プラットフォームの偽・誤情報対策として、誤った情報に注意喚起のラベルを付ける対応がされることがありますが、ファクトチェック団体のアカウントが誤情報を指摘する投稿に誤ってラベルが付けられてしまうということも起こっているそうです。

会期中開かれた約60のセッションの中には、今後のファクトチェック活動の上で参考になる情報がたくさんありました。

今年の欧州議会選挙におけるヨーロッパ・ファクトチェック・スタンダード・ネットワーク(EFSCN)のファクトチェック団体同士での国をまたいだ協力事例や、アラブ・ファクトチェッカーズ・ネットワーク(AFCN)のガザに関する誤情報の検証についての報告、ウェブアーカイブサービスWayback Machineの最近のファクトチェック業界への協力などについても聴講しました。

また、ますます巧妙になっている生成AIを使った偽・誤情報についてや、逆にAIをファクトチェックのためにどのように有効に使うことができるかについてのセッションでは、AIを使った動画制作についての紹介がありました。

AIフューチャリストのニキータ・ロイ氏

GlobalFact11が開催されたボスニア・ヘルツェゴビナは、内戦期の1995年にイスラム系住民らが虐殺される事件「スレブレニツァの虐殺」が起こった場所でもあります。このスレブレニツァの虐殺を否定する言説についてのセッションもありました。虐殺の否定論は関東大震災での朝鮮人殺害や、ナチスによるホロコーストについてもありますが、ボスニア・ヘルツェゴビナでも共通する問題があることを知りました。

海外のファクトチェック団体の活動や最新の情報を知ることができ、大変刺激的な3日間でした。私はリトマスのメンバーとオンラインのやり取りしかしたことがなかったので、今回安藤理事と初めて直接会うことができたのも良かったです。

ボスニアコーヒー

来年のGlobalFactは、ブラジルのリオデジャネイロで開かれる予定だそうです。世界のファクトチェック関係者が一同に会す貴重な場でもあるので、来年も参加できればと思います。

(高倉佳子)