検証対象

最近のトランプはホワイトハウスの執務室でテレビの生放送会見中に眠りこけるようになったが、誰も起こそうとしない。
(※海外ユーザーの画像付き投稿を引用)

町山智浩氏(映画評論家・コラムニスト)のX投稿(2026年5月12日、約780リポスト)

判定

不正確

判定の基準について

この画像は、実際の映像を加工した動画のスクリーンショットである。別の場面でトランプ氏が眠っているように見えるという指摘はあるものの、この画像のような場面は実在しない。

ファクトチェック

映画評論家・コラムニストの町山智浩氏は、Xで海外ユーザーの投稿を引用し、アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏が「ホワイトハウスの執務室でテレビの生放送会見中に眠りこけるようになった」と投稿した。引用元の投稿には、椅子に座ったトランプ氏が首を大きく傾けて眠っているように見える画像が添付されている。

元は加工動画

しかし、この画像は本物ではなく、実際の映像を加工した動画から切り出されたものだ。

2026年4月24日(現地時間23日)、トランプ氏はホワイトハウスの大統領執務室で行われたヘルスケア・アフォーダビリティ(医療の支払可能性)に関するイベントに出席した。この時の様子は、ホワイトハウスの公式サイトYouTubeで公開されている。

この公式動画を加工し、トランプ氏が机に倒れこんで舌を出したまま眠っているように変えた動画がXなどで投稿された。元になったのは、保健福祉省首席顧問で同省メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)副長官であるクリス・クロンプ氏が発言している場面だ(動画27:04頃~)。実際にはこの時トランプ氏は、体を傾け伏せ目がちになっているものの、時折カメラの方を見たりネクタイを直したりしており、眠ってはいないことが確認できる。

Xに投稿された画像はこの加工動画から取られたスクリーンショットだ。元の公式動画の該当する瞬間(動画27:07頃)と比べてみると、後ろの人物などの様子は一致しているが、トランプ氏の姿勢が違い、首の傾きも実際にはもっと控えめなことが分かる。

上:Xに投稿された画像 下:公式動画の一場面(27:07頃

この動画や画像に関する検証は、SnopesLead StoriesAFP通信なども行っている。AFP通信は加工動画の投稿者にも取材しているが、投稿者は動画を自らAIで作成したことを認め「もちろんこれはパロディを意図したものだ」と述べている。

別の場面で「居眠り」指摘も

トランプ氏が会議や式典などの最中に居眠りをしているように見えるという指摘は、過去にもたびたび話題になっている。イギリスのニュースサイトindy100は、トランプ氏が目を閉じている画像や動画を、2025年4月から2026年3月まで計13例紹介した。直近では、2026年5月のリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)についてのイベントでも「居眠り」疑惑が指摘されている(参照)。

上述の2026年4月のヘルスケア・アフォーダビリティのイベントに関しても、加工動画とは別の場面(公式動画26:32頃~)に関して、トランプ氏が目を閉じて眠っていたとする主張が報じられている(参照12)。

ただ、これらの中には目を閉じていたのが数秒程度の場面も含まれており、トランプ氏が実際にどの程度眠っていたかは不明だ。いくつかの例に関してはトランプ氏やホワイトハウスが直接反応し、「瞬きをしていただけ」などと否定している(参照12)。

このように、加工動画の元となったイベントを含め、トランプ氏が眠っているように見えるという指摘は確かにある。しかし、投稿画像そのものは現実を写したものではなく、トランプ氏の様子が誇張されていることから、投稿は全体として「不正確」と判定する。

町山氏への取材

リトマスでは検証対象の投稿を行った町山氏にメールで取材し、投稿画像についての認識や投稿の経緯を質問した。これに対し、町山氏はインドを拠点とする英語メディアMirror Nowによる動画からのスクリーンショット画像(下図)や、アメリカのケーブル報道局MS NOW(旧MSNBC)の動画などを示し、次のように回答した。なお、トランプ氏が実際に「居眠り」をしていたか否かについては本稿では追及しない。

上:検証対象の画像 下:町山氏が示した画像。Mirror Now動画の1:20頃にあたる

ご指摘の画像、現場の動画と比較しました。
 動画
 https://youtu.be/q5_qTHcp8z0?si=nbO7KtUxU6HjuEGs
 動画の1分20秒目は添付を参照
 ご指摘の画像と現場の画像の違いは①フレーミング②背後の閣僚の視線③眠るトランプの首の角度、以上です。
 よって、この画像は現場で撮影された写真ではなく、おそらくこの動画を元に微妙に調整された画像だと思われます。
 しかし、動画全体を見れば、トランプは明らかに何度も睡魔に襲われて船を漕いでおり、また閣僚も彼を起こしたりはしていません。したがってこの画像を”著しい事実の歪曲”または捏造だと断罪することにも違和感があります。
 実際、この会見でNBCなどを含む複数の大手メディアはトランプの居眠りを指摘しており、報道官も質問され、それに対して「大統領が瞬きをしていた瞬間を切り取った」という意味の反論をしています。もちろん動画を見ると瞬間の切り取りではなく、大統領は何度も眠っています。
 そもそも、トランプ大統領が会見などの公務中に居眠りをしたのは今回が初めてではなく、現在まで少なくとも13回指摘されており、大統領の執務能力が問われています。
 たしかにこの画像は問題です。AI技術によって、現実の動画や写真に手を加えて”自分のほしい絵”を簡単に作ることは危険です。そのような微妙な調整は実際の動画と比べても差異が微妙であり、真偽の判断が難しいからです。
 結論として、この画像に加工があるとしても事実の歪曲や捏造とはいえず、トランプが居眠りしている現実は変わりなく、この画像につけた自分のコメントにも変わりはありません。ただ、元の動画に同じコメントをつけて投稿すべきで、この画像を使ったのは不注意でした。その画像と動画に違いはほとんど無いにしろ、この”微妙に加工された画像”を「捏造だ」と喧伝することで事実を隠蔽することに利用されてしまうからです。

なお、回答中に報道官が反論したとの記述があるが、実際には当該の2026年4月のイベントの「居眠り」指摘について大統領報道官がコメントした事実は無く、正しくは5月の別のイベントに関する指摘にホワイトハウス公式Xアカウントが「瞬きをしただけだ」と反応したことを指すと思われる。

(大谷友也)

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