検証対象

【速報】済州航空事故 韓国警察が日本によるテロの可能性があるとして総力を上げて捜査開始

まとめサイト「おーるじゃんる」記事タイトル(2024年12月30日)

判定

誤り

判定の基準について

チェジュ航空機の事故について、「日本によるテロの可能性」を韓国警察が捜査しているという事実は確認できない。

ファクトチェック

2024年12月29日、韓国南西部のムアン(務安)空港で、チェジュ(済州)航空の旅客機が胴体着陸し、空港の外壁に衝突して炎上した。この事故により、乗客乗員合わせて179人の死亡が確認された(参照)。

まとめサイトの「おーるじゃんる」は翌30日、「【速報】済州航空事故 韓国警察が日本によるテロの可能性があるとして総力を上げて捜査開始」と題する記事を公開。公式のXアカウントから、記事のタイトルとリンクが投稿された

まとめサイト「JAPAN NEWS NAVI」(「jnnavi」とも表記される)は、この「おーるじゃんる」アカウントの投稿などを引用し、同タイトルの記事を公開。こちらも公式アカウントがX上で投稿している。さらに、「JAPAN NEWS NAVI」の記事を一般ユーザーが投稿するなど、「日本によるテロの可能性」という文言は次々に拡散されていった。

左上から「おーるじゃんる」、「JAPAN NEWS NAVI」、一般ユーザーのX投稿。それぞれ約900リポスト、約500リポスト、約5300リポストを獲得している
左上から「おーるじゃんる」、「JAPAN NEWS NAVI」、一般ユーザーのX投稿。それぞれ約900リポスト、約500リポスト、約5300リポストを獲得している

元記事は爆破予告のニュース

しかし、「おーるじゃんる」や「JAPAN NEWS NAVI」が情報元として引用している「NAVERニュース」の記事には、実際には「日本によるテロの可能性」といったことは書かれていない。

「NAVERニュース」の記事は元々韓国紙「ソウル新聞」から配信されたもので、タイトルは「『チェジュ航空事故、自分たちの仕業…31日夜にも爆弾』テロ予告を警察が捜査(“제주항공 사고, 우리 소행…31일 밤에도 폭탄” 테러 예고에 경찰 수사)」となっている。本文には以下のように書かれている。

제주항공 여객기 사고가 자신들의 소행이라고 주장하며 테러를 예고하는 메일이 법무부에 들어와 경찰이 수사에 나섰다.
30일 경찰에 따르면 법무부의 한 직원은 이날 오전 8시 50분쯤 “제주항공 사고가 자신들의 소행이라고 주장하는 내용의 이메일을 받았다”며 경찰에 신고했다.
이 메일에는 “31일 밤 한국 도심 여러 곳에 고성능 폭탄을 터뜨릴 것”이라는 내용도 담긴 것으로 알려졌다.
일본어와 영어 등으로 작성된 이 메일은 ‘가라사와 다카히로’라는 일본인 이름으로 발송됐다.(※後略)
(※筆者訳:チェジュ航空の旅客機事故が自分たちの仕業だと主張し、テロを予告するメールが法務部(※訳注:法務省に相当)に届き、警察が捜査に乗り出した。
警察によると、30日に法務部のある職員が、この日の午前8時50分頃に「済州航空事故は自分たちの仕業だと主張する内容のEメールを受け取った」と警察に通報した。
このメールには「31日夜、韓国の都心の様々な場所で高性能爆弾を爆発させる」という内容も含まれていたという。
日本語や英語などで作成されたこのメールは、「カラサワ・タカヒロ」という日本人名で送信されていた。)

ソウル新聞記事「“제주항공 사고, 우리 소행…31일 밤에도 폭탄” 테러 예고에 경찰 수사」(2024年12月30日)より

記事には、この「カラサワ・タカヒロ」という名前が2023年8月に起きた一連の爆破予告事件(参照)でも使われていたことや、日本の弁護士・唐澤貴洋氏が当時「私の名前が許可無く利用されているようだ」と韓国語で抗議していたことなどについても書かれている。警察は2023年8月と今回の爆破予告について同一犯の可能性も視野に捜査を行っており、公共施設のパトロール強化なども実施しているという。

チェジュ航空の事故が「日本によるテロ」だというのは爆破予告メールに書かれている主張だが、この主張が事実である可能性を韓国警察が考慮しているとは記事からはうかがえない。

この爆破予告事件は聯合ニュース週刊朝鮮など多くの韓国メディアで報じられているが、やはり警察の動きは爆破予告そのものに関する捜査や警戒だけで、航空機事故について「日本によるテロの可能性」を警察が捜査しているとは書かれていない。

事故の原因については、当初からバードストライク(鳥の衝突)の可能性が指摘されていたが、これを疑問視する見方もあり、本校執筆時点ではまだ判明していない(参照12)。

爆破予告で繰り返し名前を使われる弁護士

今回の爆破予告で名前を使われたという弁護士の唐澤貴洋氏は、以前よりネット上で不特定多数からの嫌がらせを受けている人物だ。爆破予告事件で勝手に名前を使われたことも国内外で多数あり、加害者の中には刑事事件として立件され裁判で有罪となった者もいる(参照12)。

今回の事件についても、唐澤氏は「私の名前を勝手に利用した犯人がいます」などとする韓国語のメッセージをX上で発信している

タイトルは既に修正

「おーるじゃんる」の記事内容は、電子掲示板サイト「5ちゃんねる」のスレッドからの転載で、ユーザーによるスレッドへの投稿がまとめられている(出典表記は無い)。しかし、「【速報】済州航空事故 韓国警察が日本によるテロの可能性があるとして総力を上げて捜査開始」という文言は元のスレッドには無く、「おーるじゃんる」が独自に付けた記事タイトルだと考えられる。

現在、このタイトルは「拡大解釈されたタイトルを修正」するとして「韓国警察が日本発のテロ予告に総力を上げて捜査開始 済州航空事故も自らの仕業だと主張」に変更されている

以上のように、報道から得られる情報の限りでは、「日本によるテロの可能性」を韓国警察が捜査しているという事実は確認できないため、「おーるじゃんる」の記事タイトルは「誤り」と判定する。

本件については、ITジャーナリストの篠原修司氏も検証記事を公開している。

(大谷友也)

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