検証対象
昨夜の報ステでせっかくのアピールチャンスなのに他候補に比べてやけに言葉少なめだった小泉進次郎氏を観て、環境大臣の時米国でコメントを求められて「何とかしなければいけない。なので、何とかしなければいけないと思っている」の英語テロップで「I have no idea.」って翻訳されたこと思い出した
作家を名乗るユーザーのX投稿(2024年9月13日、約1.1万RP)
判定

小泉氏の発言が「I have no idea.」と翻訳されたことも、そもそも小泉氏が「何とかしなければいけない。なので、何とかしなければいけないと思っている」という発言をしたこと自体も、確かな記録を確認することはできない。
ファクトチェック
検証対象の投稿では、小泉進次郎衆議院議員が環境大臣時代(2019年9月~2021年10月)にアメリカで「何とかしなければいけない。なので、何とかしなければいけないと思っている」とコメントし、それが英語テロップで「I have no idea.」(「私には考えが無い、分からない」の意味)と翻訳されたと主張している。
投稿前日の2024年9月12日、小泉氏は自民党総裁選(27日投開票)の候補者の1人として、他の候補者と共に「報道ステーション」(テレビ朝日系列)に出演していた(参考1、2)。なお、投稿者は「他候補に比べてやけに言葉少なめだった」と評しているが、小泉氏の発言量は他の候補と比べて大きくは変わらない。
検証対象の投稿はまとめサイト「NewsSharing」の記事で取り上げられ、この記事もX上で広く拡散されている。

「I have no idea」の訳は確認できず
しかしながら、検証対象の投稿者はこの「I have no idea.」という英語テロップをどこで目にしたのか、具体的に明らかにしていない。海外メディアの報道なのか、あるいは個人による訳なのか、一切は不明だ。
「”Shinjiro Koizumi” “I have no idea”」といったキーワードでWeb検索しても、投稿日以前に小泉氏の発言がこのように訳されたという例を見付けることはできなかった。
「何とかしなければ~」発言自体も出所不明
さらに、そもそも小泉氏が過去に「何とかしなければいけない。なので、何とかしなければいけないと思っている」と発言したということ自体も、裏付ける記録は見当たらない。
Googleのニュース記事検索のほか、G-Searchの新聞・雑誌記事データベース、さらには環境大臣としての小泉氏の発言記録を調べても、「何とかしなければいけない。なので、何とかしなければいけないと思っている」に一致する発言は確認することができなかった。

「今のままでは~」は報道あり
一方で、これに似た言葉は小泉氏の発言として報道されたことがある。環境大臣時代の2019年9月、国際連合の気候行動サミットへの出席に際して言ったとされる、「今のままではいけないと思います。だからこそ、日本は今のままではいけないと思っている」というものだ。テレビ朝日系列のニュースサイト・テレ朝newsの記事や、同じくテレビ朝日系列のYouTubeチャンネル・ANNnewsCHの動画でもこの発言が報じられている。2024年9月の毎日新聞の記事でも、この発言がいわゆる「進次郎構文」の例の一つとして取り上げられている。
しかし、ANNnewsCHの動画を見ると、この発言は「~思っていると」と、言葉の途中と思われるところで映像が切れていることが分かる。

このことや、NHK政治マガジンの記事に「日本は今のままではいけない。今のままでいいなんて、決して思っていない。日本の存在感を発揮するということが大事だ」という発言内容が記録されていることなどから、小泉氏の実際の発言には何らかの続きがあり、報道された言葉は一部分だけが切り取られたものなのではないかとする推測もある(例)。
いずれにせよ、この「今のままでは」に関しても「I have no idea.」と翻訳された例は見当たらない。
根拠は不十分
小泉氏の発言が何らかの媒体で「I have no idea.」と翻訳された事実は確認できず、そもそも基となる「何とかしなければいけない。なので、何とかしなければいけないと思っている」という発言自体も実在を確認できなかった。そのため、検証対象の投稿は「根拠不十分」と判定する。
なお、この投稿をした人物は実在の作家の名前をアカウント名に使用しているが、本人かは不明である。リトマスでは投稿者に身元や情報の根拠などを聞くためX上でコンタクトを試みているが、本稿執筆現在で返答は得られていない。
(大谷友也)