検証対象
【フェイク画像に注意🚨】 高市早苗氏が隣国の飲み方をしているというフェイク画像。 ▶指が6本。長さもおかしい ▶右手がコップを塞いでいて、口に届いていない ▶コップの形状がヘン。小さすぎるし、光の反射もメチャクチャ。 …こういう画像を広めるのは名誉毀損になるのでは?
一般ユーザーのX投稿(2024年8月17日、約800リポスト)
(※画像付き投稿)
判定
この画像は実際の国会中継の動画を拡大したもので、「フェイク」ではない。
ファクトチェック
検証対象の投稿は、経済安全保障担当大臣の高市早苗衆議院議員が国会らしき場所で水を飲んでいる様子を示す別のユーザーの投稿画像を引用し、部分拡大したうえで、「フェイク画像」だと主張している。投稿者は「指が6本」「コップの形状がヘン」といったことを「フェイク」の根拠に挙げている。
投稿者が「隣国の飲み方」と呼んでいるのは、ネットスラングで「朝鮮飲み」と呼ばれている仕草のことだ。器を手で隠すようにして飲み物を飲むのを朝鮮式の作法だとして、この飲み方をする人は韓国・北朝鮮とつながりがあるとみなす説が以前からネット上で広まっているが、その根拠は乏しい。
コミュニティノートやファクトチェックで「AI生成」指摘も…
引用元の投稿画像に対しては、コミュニティノート(Xの一部登録ユーザーが他の人の投稿に背景情報を追加できる機能)でも指摘が入っており、指の部分の不自然さを理由として「デジタル修正されている、と断言できるレベルのもの」「生成AIで作成された画像の可能性」「『意図的なデマの発信』である可能性が高い」などと疑義が述べられている。このコミュニティノートは一時ユーザー同士の投票によって「役に立つ」と評価され、全ユーザーに公開される状態になっていた(アーカイブ)が、本稿執筆時現在では限定公開に戻されている。
日本ファクトチェックセンター(JFC)は2024年8月19日、この画像を「改変」とするファクトチェック記事を公開(アーカイブ)。「高市氏の指の数が親指を除いても5本あるように見える。また、右手首には左手にはない黒い袖口が見え、手首が長いなど違和感がある。手にするグラスも形状が判別しづらい」といった理由から、「画像はAIで生成または一部改変されたもので、誤り」と結論付けていた。これらの記述は現在は訂正されている(後述)。
実際の国会の場面
実際にはこの画像は本物の国会中継動画から切り取られたもので、改変はされていない。
元の動画は、参議院の公式のサイトから見ることができる。2023年3月3日参議院予算委員会の動画、2:50:16頃が問題のシーンだ。高市氏はこの日、元総務大臣として、放送法の解釈変更に関する小西洋之議員の質問に答弁していた(参照)。
また、同じ予算委員会の動画は立憲民主党公式YouTubeの国会情報チャンネルからも公開されていて、画質を最高(720p)に設定することで、参議院の動画よりも鮮明な画質で当該シーン(3:52:42頃)を見ることができる。
Xで投稿された問題の画像とこのYouTube動画の場面は拡大するとほぼ一致し、同一のものと判断できる。
高市氏はこの時画面内のやや後方に座っていて、拡大すると細部は不鮮明にしか映らない。右手下側の「指」に見える物が何かは定かではないが、恐らくは手の向こうに映る顔の部分が手前のアクリル板の縁の線と重なって指のような形に見えているにすぎず、動画上で前後の場面を見ても不自然さは見受けられない。また、高市氏が持っているのは「コップ」ではなく実際にはペットボトルであり、これも不自然な形状ではない。
さらに、JFCは高市氏の右手首に「左手にはない黒い袖口」が見えるとも指摘していたが、高市氏はこの日右手のみにサポーターのような物を付けていることが確認できるため、これも画像が加工されているという根拠にはならない。高市氏は2022年10月の会見時にもこれとよく似たサポーターを着用していて、腱鞘炎対策のためだと明かしている(動画)。
以上のように、高市氏が水を飲む画像は国会中継の一場面を正確に表したものであるため、「フェイク」と主張する検証対象の投稿は「誤り」である。
JFCは記事を訂正
画像を「改変」と判定する記事を公開していたJFCは、その日のうちに「実際に高市大臣が水を飲む動画が見つかり、画質が乱れているだけで高市大臣がこの飲み方をしている可能性が高い」とする訂正を発表。元々のファクトチェックから論点を変更し、「画像は本物だが、それをもって『親韓派』と主張するのは根拠不明」という内容に改めている。
(大谷友也)