検証対象

ゼレンスキー、EU会議で椅子を片付けられました。
(※動画付き投稿)

一般ユーザーのX投稿(2024年7月1日、約1300リポスト)

判定

ミスリード

判定の基準について

これは連続して行われた一連の協定署名式の合間に、会場の準備が行われた場面である。片付けられたのは別の署名者が座っていた椅子で、ゼレンスキー氏はその後問題無く自分の椅子に戻っている。

ファクトチェック

動画では、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、手を掛けていた椅子や書類のような物をスタッフに片付けられ立ち尽くしているように見える。

背景の「European Council」の文字などから、これは欧州連合(EU)の加盟国首脳らによる会議である欧州理事会の場と分かる。ウクライナはEUへの加盟を目指し現在交渉を進めている最中だが、動画を見るとあたかもEUの会議の場でゼレンスキー氏が冷遇されているかのような印象を受ける。

署名式合間の会場準備の場面

動画は通信アプリTelegramの投稿から転載されたもので、右下には転載元のTelegramチャンネルのロゴが入っているが、元々は2024年6月27日の欧州理事会の公式配信動画から一場面を切り抜いて加工したものだ(2:23頃~)。

前後の場面と合わせて見ると、ゼレンスキー氏はこの会場で3つの協定への署名式を連続して行っている。最初はウクライナとEUの共同安全保障協定で、ゼレンスキー氏の他に欧州理事会のシャルル・ミシェル議長と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が署名に参加している。2番目と3番目はウクライナがリトアニアおよびエストニアとの間で個別に結んだ二国間安全保障協定で、それぞれギターナス・ナウセーダ大統領、カヤ・カラス首相がゼレンスキー氏と署名を交わしている。

XやTelegramに投稿された動画に映っているのは、ウクライナとEUの間の協定の署名式が終わり、リトアニアとの署名式に向け会場の準備が行われている場面だ。署名者が3人から2人に変わるのに伴い、スタッフが机上のネームプレートを置き替えたり、椅子を片付けたりしている。

EUとの協定では3人分の椅子が用意されていたが、この内片付けられたのはミシェル氏が座っていた向かって左側の椅子だ。ゼレンスキー氏が座っていた中央の椅子は残されていて、ネームプレートもゼレンスキー氏のものはそのまま置かれている。

椅子から立ち去るミシェル氏(左から2人目)と、近付くゼレンスキー氏(左から3人目)。手前側を歩く2人のスタッフがゼレンスキー氏以外のネームプレートを置き替えている。欧州理事会の動画より(以下同)
ミシェル氏が座っていた椅子を片付けるスタッフ(左から2人目)

ゼレンスキー氏はその後再び中央の椅子に座り、リトアニアやエストニアとの協定の署名式を行っている。

再び同じ椅子に座り署名するゼレンスキー氏(左から2人目)

つまり、ゼレンスキー氏は自分が座っていた椅子やこれから座るべき椅子を奪われたわけではなく、その後も問題無く自分の椅子に座り署名式を続けている。スタッフが椅子を片付けたのはあくまで署名者の人数に合わせて会場の準備をしていただけで、ゼレンスキー氏が特に不自然な扱いを受けたとは言えない。

検証対象の投稿は、前後の場面が切り抜かれた恣意的な動画を基に、あたかもゼレンスキー氏が冷遇されていたかのような印象を与えるもので、「ミスリード」と判定する。

(大谷友也)

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