検証対象
今頃こんな馬鹿なこと言ってる 馳知事「ヘリ部隊で運ばざるを得ないことが分かった」
一般ユーザーのX投稿(2024年1月9日、約9600RT)
(※画像付き投稿)
判定
この投稿は1月9日のものだが、馳知事がこの発言をしたのは1月5日である。また、ヘリでの物資輸送はさらにその前から既に行われている。
ファクトチェック
2024年1月1日に発生した能登半島地震の直後から、ネット上ではヘリコプターを使った救助や空路での支援物資の輸送を求める意見が多く挙がっている。
検証対象のポストは9日に投稿されたもので、石川県の馳浩知事が記者らに向かって話すニュース映像のキャプチャ画像を添付している。テロップには馳氏の発言として「自衛隊のヘリの空の部隊で運ばざるを得ないことが分かった」とあり、投稿者はこれに対し「今頃こんな馬鹿なこと言ってる」とヘリ輸送の必要性認識の遅さに対する批判と思われるコメントをしている。
画像右下の「©KTK」の文字から、これは略称をKTKとするテレビ金沢の報道であることが分かる。テレビ金沢の1月5日の記事(アーカイブ)の動画で、投稿画像と一致する場面が確認できる(1:21~)。
動画は、5日朝に支援物資の集配拠点となっている石川県産業展示館へ物資が運び込まれる様子や、七尾市内の道路状況の悪さについて触れた後、産業展示館4号館の前で馳氏が以下のように話す様子を伝えている。
「県道国道のひび割れがですね、段差が、10センチからひどい所1メートルくらいの段差があって進めない」
テレビ金沢ニュース映像より
「自衛隊のヘリの、空の部隊で運ばざるを得ないのかなということがよく分かりましたので」
馳氏は5日に産業展示館を視察したことがNHKや北陸放送で報じられており、発言はその時のものと考えられる。
つまり、検証対象の投稿が9日に「今頃」と批判した馳氏の発言は、実際はそれよりも数日早くされたものということになる。
ヘリ運用はそれ以前から
また、馳氏は道路状況の悪さから陸路での物資輸送が困難であるということを説明しているが、ヘリによる輸送がそれまで行われていないということではない。
馳氏は地震翌日の2日にはXの投稿で「陸路が寸断されている輪島については自衛隊のヘリで」とヘリ輸送に言及しているほか、3日の投稿でも「陸路、海路、空路など、あらゆる手法を最大限活用しながら」支援物資を配送すると述べていて、この時点で既にヘリの活用を検討していることが分かる。
実際に、防衛省の資料には、3日の活動として陸上自衛隊のUH-1や海上自衛隊のSH-60といったヘリによる物資・人員の輸送が報告されている。
3日の富山新聞の記事でも、産業展示館から被災地への物資輸送にヘリが使われたことが報じられている。
偵察や救助などの用途を含めると、被災地では地震発生当日から既にヘリが出動している。1月1日、地震発生から35分後の16時45分に馳氏が知事として陸上自衛隊に災害派遣要請を行い、UH-1などのヘリ8機を含む自衛隊の航空機少なくとも18機による偵察が行われている。2日には、UH-60計3機による要救助者の移送と、大型輸送ヘリCH-47による応援部隊の輸送を実施。また、全国からの緊急消防援助隊が、5日朝までにヘリ18機を含む体制で救助などの活動を行っている(資料p.42)。
以上のように、検証対象の投稿は馳氏の発言を実際よりも数日遅れで「今頃」としているのに加え、実際の物資輸送におけるヘリの運用状況が踏まえられていないため、「ミスリード」と判定する。
(高倉佳子、大谷友也)