検証対象
気象庁が今回の能登大地震の 地震波形は極めて人工的 地震と 認めた 国民に恐怖心を与え 緊急事態条項の 憲法改正への 企みと言える
一般ユーザーのX投稿(2024年1月2日、約2700リポスト)
(※他のユーザーの投稿動画を引用)
判定
この動画は2016年、北朝鮮による核実験が行われた際の会見である。
ファクトチェック
動画では、気象庁の地震津波監視課の長谷川洋平課長(当時)が記者会見をする様子に日本語と英語の字幕が重ねられている。長谷川氏は、「今回日本各地の地震計で観測された」波形を、過去の北朝鮮核実験や自然地震の時の波形と比較して図示。観測された波形の特徴が「自然の地震とは相当異なっている」ことから、「自然の地震ではない可能性がある」と述べている。
投稿前日の2024年1月1日には、石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震(令和6年能登半島地震)が発生し、大きな被害が出ている。
会見は2016年
しかし、動画の前半ではよく見ると右下に「January 6, 2016」(2016年1月6日)という文字が見える。つまり、この会見は検証対象の投稿から8年ほど前に行われたものであり、長谷川氏が言う「今回」観測された波形というのは、2024年の能登半島地震を指しているのではない。
2016年1月6日、日本各地の地震計で北朝鮮を震源とする地震が観測された。その後、北朝鮮政府は水爆実験を成功させたと発表。実際に水爆が使われたのかは疑問とする見方もあるが、いずれにせよ何らかの種類の核実験が行われたと見られている(参照)。
気象庁の長谷川氏による会見はこの時行われたもので、字幕などを足す前の元動画は共同通信が配信している。
今回の能登半島地震について、気象庁は断層が上下方向にずれ上側の岩盤がのし上がる「逆断層型」と推定しており、人工地震という見解は示していない。
以上のように、気象庁が能登半島地震の地震波形を人工的と認めたというのは「誤り」である。
繰り返される「人工地震」説
今回の能登半島地震では、地震が何らかの人為的な方法で故意に引き起こされたとする「人工地震」説がSNS上などで拡散されている。こうした主張は過去の地震でもたびたび拡散されていて、「地震波形にP波は見当たらない」といったことが根拠にされることが多いが、いずれも専門家によって否定されている(参照1、2)。
(大谷友也)