検証対象

円安を労働者のせいにするのあまりにクソすぎるだろ
(※画像付き投稿)

一般ユーザーのTwitter投稿(2022年10月20日、約9300RT)

判定

ミスリード

判定の基準について

画像は小林氏のニュースでの発言の一部が切り取られたもの。小林氏は日本経済全体における物価と賃金の悪循環が招いた結果の一つとして労働者のスキル低下を挙げているのであり、円安の原因や責任が労働者側にあると述べているわけではない。

ファクトチェック

投稿に添付されているのは、慶應義塾大学・経済学部の小林慶一郎教授がニュース番組でコメントしている場面を撮影した画像だ。「一時1ドル150円台」「背景に“競争力の長期的な低下”」というテロップから、当時進行していた円安の背景についてのコメントであると推察できる。

画像の元となっているのは10月20日に放送された「NHKニュース7」で、東京外国為替市場で円相場が一時1ドル150円台を記録したことを報じるニュース中の一場面である。

元のコメントは?

番組での小林氏のコメント全文は下記の通り。

(ナレーション)
円安が日本経済の追い風にならない理由。専門家は日本の競争力の長期的な低下があると指摘します。

(慶応義塾大学経済学部 小林慶一郎教授)
賃金も上がらないので物価も上がらないし、物価が上がらないから賃金も上がらないという、こういう悪循環がずっとここ20年続いていたと思うんですね。
その間、日本の企業は非正規雇用が増えていって、日本の労働者のスキルっていうのがどんどんこの20年落ちてきているんだと思います。そういったことの蓄積で日本経済の競争力が非常に弱くなっている。
それの表れが円安であり、貿易収支の赤字の拡大と。

2022年10月20日「NHKニュース7」より(筆者による文字起こし)

「日本の労働者のスキル」低下の背景には、賃金と物価が上がらない「悪循環」が長く続いた結果、非正規雇用が増えてきたことがあるとしており、円安との関連性は指摘しているものの、労働者自身に責任があるとの趣旨ではないことが分かる。

NHK NEWS WEBでは

同じ内容の記事がNHK NEWS WEBにもあるが、こちらでは円安の要因についてより明確に書かれているので、以下に引用する。

Q.円安がここまで進んだ根本的な原因は?

A.金融緩和を続ける日本と利上げをどんどん進めるアメリカの金融政策の違い、それに伴う日米の金利差の拡大が直接的な要因なのだが、じつは背景には過去20年、30年の日本の低成長のツケがいまになって現れているともいえる。
日本は長いこと経済の低成長が続いていて、その間、諸外国では物価と賃金が上がり、ある程度の成長を実現してきたが、日本はデフレで賃金も上がらず、その結果として日本の労働者のスキルも落ちてしまっていた。
成長の格差によってあらゆる面で「安い国」になってしまったことが、いまになって円安という結果につながっている。

NHK NEWS WEB 10月20日付の記事より

円安の「直接的な要因」は「日米の金利差の拡大」で、背景に「日本の低成長のツケ」があり、「労働者のスキル」低下はデフレで賃金が上がらなかった「結果」であると明言しているのが分かる。

労働者自身の責任を問うような表現は見つからず、むしろ経済全体の構造的な問題について警鐘を鳴らすような内容だ。

小林氏の回答は

リトマスでは上記内容について小林氏に取材を行い、以下のような回答を得た。

Q.「円安」と「日本の労働者のスキル低下」はどのように関係していると考えているか?

A. 「2022年に進んだ円安」は、米日の金利格差など日本の外的要因によるものであり、「日本の労働者のスキル低下」は直接は関係していない。円安とは別に、日本の長期停滞の悪循環の一要素として、日本の労働者のスキル低下という現象が長らく続いている。

Q.今回ネット上でこのような投稿が拡散されたことについて、どのように感じているか?

A.ニュースを見て「この人は円安を労働者のせいだと言っている」と本当に誤解する人はいないと思うので、最初から小林慶一郎に悪意を持つ人が、私個人を攻撃する目的でわざわざ事実を歪曲した情報を書いたものと推測します。
なぜ私が悪意を持たれたのか分かりませんが、コロナ対策、財政健全化、日銀の金融政策、などいろいろなテーマについて発言しているので、それらのテーマでの私の主張に反対する方が、私の発言の信頼性を毀損するためにこのような投稿をした可能性があるのではないかと、推測して、たいへん嫌な気分です。

投稿者の実際の意図は不明だが、小林氏本人の見解とは異なる内容が拡散していることは事実のようだ。

投稿は小林氏の発言の一部を切り取ったものであり、発言全体の内容を誤解させるものであることから、「ミスリード」であると判定した。

(鳥居大嗣・大谷友也)

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