検証対象

ゼレンスキー、自ら公開したビデオを削除。机上の覚醒剤が見えてしまったからだ
(※画像付き投稿)

宋文洲氏(実業家・評論家)のTwitter投稿(2022年4月20日、約3800RT)

判定

誤り

判定の基準について

覚醒剤とされる線は光の反射や机の装飾、箱型の物体は電源アダプターを誤認したものである。また、動画は削除されていない。

ファクトチェック

検証対象のツイートは実業家・評論家の宋文洲氏によるもので、ウクライナのゼレンスキー大統領の顔と机上の様子が写った3枚の画像が添付されている。3枚ともに、中国語で「4月16日、ウクライナのゼレンスキー大統領がトランス状態の動画をアップロードした。動画はすぐに削除されたが、目ざといネット市民がダウンロードし、机の上に薬物が見付かった!」という文が添えられている。

3枚目の画像では、赤丸で囲われた部分に線状の白い物と箱型の物体が見える。粉末にした薬物を線状に置いて吸引する「スニッフィング」をゼレンスキー氏が行っていて、箱型の物体も薬物に関連する何かであるという主張のようだ。

動画は消えていない

これらの画像は、ゼレンスキー氏が2022年4月17日(日本時間)にInstagramに投稿した動画メッセージからのスクリーンショットを使っている。しかし、投稿は本稿執筆時現在も削除されておらず、過去に削除されていた形跡も見当たらない。

また、同じ動画はウクライナ国防省の公式Twitterアカウントなどからも見ることができる。こちらも削除された形跡は無い。

線は光の反射と机の模様

動画の中でゼレンスキー氏は、時折笑顔を見せながら、机上の書類や家族写真、市民から贈られた雄鶏型の水差し、ウクライナ国旗などを映している。話しぶりは穏やかな様子で、「トランス状態」という表現はかなり恣意的に見える。

問題の「覚醒剤」とされるものは、家族写真にカメラを向けた場面(0:16付近)で映る。

元動画の問題のシーン

Twitter上の画像では不鮮明だったが、元の動画を見ると、白く見えた3本の縦の線のうち左側の1本は写真立ての縁に当たった光の反射であり、横に伸びる線とつながっていることが判別できる。右の2本は机の金色の模様で、写真立ての奥の線と連続している。また、右側の白い物体は単なる電源アダプターのようだ。

拡散された画像では、反射の横の線の一部や、机の模様の奥側の方はほとんど見ることができない。これが画質の悪さのためか、あるいは意図的に画像が加工されているためなのかは定かではない。

ゼレンスキー氏の執務室の机に2本線の模様が入っている様子は、別の日の写真(参照1参照2)などからも確認できる。

AFP通信配信(大統領広報提供)の写真より。ゼレンスキー氏から見て右手側、動画でも映っていたシルバーのマウスや青いペンらしき物があるあたりに、緑地に金色の線が見える

なお、情報検証JPでは、検証対象のツイートを投稿した宋氏に対しコメント等を求める取材を行ったが、期限までに回答は得られなかった。

これらのことから、ゼレンスキー氏が覚醒剤が映ったビデオを削除したとする情報は「誤り」であると判定する。

(大谷友也)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事を読んでよかった、役に立ったと思われた方は、ぜひ「ナットク」やシェアボタン(右下)をクリックして、サポーターになっていただけると嬉しいです。
記事で気になるところがありましたら、こちらからコメントください。
新しいファクトチェック記事のお知らせメールを希望する方はこちらで登録できます。